2020 Fiscal Year Research-status Report
幼児の見立ての実態に基づく子どもの知識構築のプロセスを捉える視点の確立
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20K02917
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
添田 佳伸 宮崎大学, 教育学部, 教授 (00197005)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 見立て / 幼児 / 知識構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は,個人の知識構築の過程を明らかにすることであるが,短期的には特に幼児期に着目し,幼児期における幼児の認知・理解の様相を明らかにすることを目的としている。 研究方法としては,幼稚園現場において普段子どもと接している保育者によって子どもの様子を動画や写真に収めることと,筆者自身による観察も行った。 結果として,見立てと関わるいくつかの幼児の活動が見られた。附属幼稚園は,クラスごとの教室はあるが,園児は遊戯室,園庭を含めて他のクラスの教室も自由に行き来しており,日常的に異学年異クラスの園児同士が一緒になって遊んでいる。したがって,特に遊戯室では共通の遊び道具を使用している関係で同じような活動が見られた。大きなブロックを使って家や道を作るという活動などはどの学年の幼児も関わっている。また,お姫様のドレスのような衣装はどのクラスの教室にも同じように置いてあるので,そういったドレスを着てお姫様になったつもりになる幼児もどの学年にもいた。さらに,紙やブロックを使って動物を作る活動は幼稚園ではよく見られるが,今回観察した幼児もタコを作っており,同様の見立てが行われていることがわかる。折り紙でチューリップやザリガニを作っているが,折り紙で何らかのものを作ること自体すでに見立てが行われることが前提となっている。幼稚園では一般によく見られる光景であるが,本研究においても見られた活動である。 今回確認された幼児の見立ては,新たな知識の獲得過程において見られたものではなく,すでに持っている知識を表現している場面ばかりであった。毛糸を焼きそばに見立てることはその形状からして納得がいきやすいが,毛糸でジュースを作る活動の場合は形よりは色の方が優先されていると考えられる。また,フォークで字を書くふりや双眼鏡(とみなされるもの)で監視をするふりをするなどのふり行為も今回確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼児の活動を観察・記録するためのタブレットやビデオカメラ,デジタルカメラを購入し,保育者による記録をとることができた。筆者自身も幼稚園をたびたび訪れ,直接幼児の活動を観察・記録する機会をもつと同時に,保育者との意見交換も行った。 本研究の1年目の成果としては,研究の中間まとめとして,令和3年3月27日に行われた九州数学教育学会(当番大学:福岡教育大学)で成果を発表した。発表タイトルは「数学教育における幼児の見立ての研究(1)-幼児に焦点を当てて-」である。質疑応答の中で今後の方向性についても示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,前年度末に九州数学教育学会で発表した内容をもとに加筆修正し,本学部の紀要に投稿し成果の公開を行う。 子どもの見立ての様子については,附属幼稚園での観察・記録を引き続き行い,前年度の観察等による子どもの実態のとらえ方の精緻化を図る。特に,年齢ごとの特徴について詳しく分析し,発達による違いに着目したまとめを行う。1年目は,知識構築に関してはまだ十分な捉えができていないので,知識構築の視点での幼児の実態把握を行う。2年目の目標である子どもの実態を捉える枠組み作りに向けて,附属幼稚園の教諭と協議を継続的に行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度は旅費として60万円計上していたが,参加を予定していた学会等がことごとく中止もしくはリモート開催となり,旅費がそのまま残ってしまった。物品費も予定より安く購入できたものや,コロナの関係で購入が遅れたものもあり,結果的に30万円程度残り,旅費と合わせると90万円程度の繰り越しとなった。 物品費については,令和3年度の研究に充て,備品の追加購入や消耗品等の計画的な購入を進め研究の充実を図っていく。旅費については令和3年度の学会等の現地開催の状況を踏まえながら適宜使用する。
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