2021 Fiscal Year Research-status Report
幼児の見立ての実態に基づく子どもの知識構築のプロセスを捉える視点の確立
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20K02917
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
添田 佳伸 宮崎大学, 教育学部, 教授 (00197005)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 見立て / 幼児 / 知識構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の2年目である本年は,引き続き本学部附属幼稚園での幼児の観察,データの収集,附属幼稚園の教諭等との協議及び考察等を行った。幼児が単独で見立てによる知識構築を行っている場面を直接捉えることが困難であったという1年目の反省を踏まえ,複数の幼児が一緒に活動する中で行われる見立てに着目することとした。つまり,見立ての共有が行われていると思われる場面を捉え分析することとした。その結果,3歳児から5歳児のどの発達段階の幼児においても,見立ての共有が行われていることが確認できた。すなわち,ある幼児が行った見立てがほかの幼児へと伝播していることが分かった。 例えば,ある4歳児は,砂と水を使ってケーキの見立てを行っていた他の幼児からふっくらするまで型に入れるように言われ,ケーキの見立てを共有するとともに「ふっくら」という意味を新たに構築していた。また,別の4歳児は,砂場を遺跡に見立て発掘を行っていたところ,別の幼児が砂場を海に見立てたことによりそれに合わせ,「サメがいるぞ」と言ってイメージをさらに膨らませていることなども確認できた。 しかし,見立ての共有は必ずしもいつも起きるとは限らず,ブロックや段ボールを使って一緒に遊んでいても,別々の見立てを行っているという場面もあった。今回観察された見立ての共有が起きる場面においては,保育者が介入していることが分かった。活動を促したり,幼児の言動に共感したり,イメージを尋ねたりしながら見立ての共有を促進させていた。見立ての共有には,保育者の適切な介入が大きな役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2年目に行ったこととして,1年目の成果として令和3年3月27日に九州数学教育学会で発表した内容をもとに,学部紀要にまとめることができた。 また,研究2年目の成果としては,幼児の活動を引き続き観察・記録するとともに保育者との意見交換を行い,見立ての共有という新たな視点から幼児の活動の様子の分析を行い,幼児の実態を把握することができた。そして,その研究の成果を学会で発表することができた。以上により,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,前年度に引き続き,年度末に九州数学教育学会で発表した内容をもとに加筆修正を行い,本学部の紀要に投稿し成果の公開を行う。 次に,今回見立ての共有という視点が得られたことで,その視点から今度は附属小学校の児童について,算数の授業の観察・記録を行い,見立てと知識構築との関係を考察していく。特に,見立てが行われることが前提として設定されていると考えられる第1学年の図形領域を見ていく予定である。
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Causes of Carryover |
物品費については,Web会議等に対応するために追加で物品を購入しており,ある程度計画的に使用できている。 一方,旅費については,令和3年度も参加を予定していた学会等がことごとくリモート開催となり,そのまま残ってしまった。 令和4年度については,引き続き物品の計画的な購入を進め研究の充実を図っていく。旅費については,学会等の開催状況を踏まえながら適宜使用する予定である。
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