2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K02918
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
深川 和良 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (70452927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 伝統的技術 / 技術科 / 金属加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島県指定伝統工芸品の刃物をモデルとして,中学校技術科で学ぶ内容「材料と加工」の教材化として最適化を実施した。過去の試行授業や試行より得られた知見から解決すべき課題を抽出した。まず,鍛造工程において加熱炉は,従来より市販されている七輪を利用していたが,炉としての耐久性および鍛造作業性の観点から,ホームセンター等で入手可能な耐熱レンガによる炉を設計した。加熱能力はサーモビュアーの測定により七輪使用時と同等であることが確認できた。これにより作業性および安全性の改善が達成できた。刃付け工程においては,固定具と作業方法の見直しをおこなった。固定具はボルトのみの固定では被加工材が不安定であったため、容易に製作できる簡易クランプを設計した。加えて刃付け作業の方法も見直し自重を生かす方法を考案した。熱処理工程においては,家庭用フライヤーの有用性を確認でき,処理能力の向上が達成できた。これらは大学生を対象とした試行授業によりその効果が確認され,改善の効果が確認できた。 これらの改善を反映させて,中学校技術科の教員養成課程における金属加工技術の実習の製作題材として導入し,技術科の教員を目指す学生にアンケートを実施した。結果,受講者側としても改善の効果が感じられことがわかった。また,鍛造工程は難しさを感じたものの製作に対する興味・関心,意欲は高く,全工程において技能向上につながっていることもわかった。本製作題材を通して伝統的技術への興味・関心も得られ,製作後に実際に家庭内で使用するなど満足度の高い教材であったといえる。 以上のことから,中学校技術科の教材としての可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鹿児島県指定伝統工芸品の刃物をモデルにした教材開発として,研究代表者の過去の研究成果による知見と幾度かのに見直しから最適な専用機器や固定具,また作業方法などを検討した。鍛造や熱処理に使用する加熱炉を耐熱煉瓦により容易に組み立てられるものを設計し,サーモビュワーによる温度測定からその能力の確認ができた。また,中学生が作業をする視点から作業性の改善を実施した。これらは試行を通した評価から一定の成果が得られた。これらの成果は,学会発表および雑誌論文にて公表している。 しかしながら,コロナ禍の影響から教育現場における各種試行は困難であるため今年度は技術科教員を目指す大学生を対象とした試行授業をおこない評価をしたに留まっている。だが,この試行により改善の効果,技術・技能取得そして伝統的技術への知見や興味・関心が得られていることが示された。中学校での実践の機会は現状では今後も不確定であるため,比較的生徒の年齢が近く備品・設備および作業環境が整っている工業科での実践を念頭に協力校への依頼,調整を行っている。併せてこの実践に備えて刃殺しなど工具類の調整に着手している。 一方,県内企業における調査等を予定していたが,こちらも新型ウィルスの影響により延期,停滞を余儀なくされた。そのため考案した工程による熱処理効果の分析,評価が今年度は得られなかった。しかしながら,企業で採用されている熱処理工程によるサンプル材を入手できた。現在,設定した水準を電気炉で処理し,入手したサンプル材とともに教材化のため考案した工程との比較を検討,実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型ウィルスの収束する様子がなく,むしろ変異ウイルスの影響で今後も昨年度と同程度以上に予断を許さない状況であることを踏まえ、中学生や中学校での調査等の実施は期待できないと考えている。そこで,状況次第であるが比較的生徒の年齢が近く備品や設備が整っており中学校に比べ少人数での授業が可能な工業高校での試行も検討している。 また,作業方法について、授業内やクラウド経由など授業外でも自宅等で学習できるような動画教材を作成する。これはICTを活用した教材としても有用であり,想定外であったがGIGAスクール構想を踏まえ1人1台の端末が整備されている状況を想定し,対面授業の効率化などこのコロナ禍におけるニーズも念頭に置いて検討する。加えて,各自生徒が逐次確認しながら作業できるようにタブレットにより作業方法を確認するための動画教材の作成も試みる。 さらに,製作工程以外でも伝統的技術に興味・関心を誘起するために,集成館事業も含め鹿児島における製鉄~鍛冶技術に関して技術史的観点から教材用資料を,研究代表者らの研究成果や所属学科で行われた研究成果を整理,再編することで作成する。これもICTを活用した教材として昇華させる計画である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響のため,出張等の規制や講演会などのオンライン開催に伴い出張等が軒並み中止になったためである。 次年度においては,当初予定に合わせ昨年度実施できなかった調査に関わる費用として使用計画を立てている。
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Research Products
(2 results)