2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K02918
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
深川 和良 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (70452927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 伝統的技術 / 金属加工 / ものづくり教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島県指定伝統工芸品の刃物をモデルとして教材のさらなる適正化を実施した。考案した作業方法を評価するため,熱処理工程における金属組織および硬さ試験を実施した。結果,提案した加熱炉では安定してマルテンサイト組織を得ることができず,刃物として十分な硬さを得ることが困難であることが判明したため再検討した。入手,加工など機材導入を容易にするためホームセンターでも扱われている土木資材(U字溝)と送風効率を考慮した鋼管を用いた加熱法を考案した。結果,被加工材を焼入れ温度まで容易に上昇させることができ,安定して刃物として十分な硬さを得ることができた。 一方,作業性や授業の評価をおこなうため,コロナ禍を考慮し十分な換気能力がある実習場を保有する工業高校で実践を行った。この際,実習時間の効率化を図り可能な限り短時間で展開できるよう動画教材も制作し,作業方法等の予習のための事前の視聴や,タブレットにより実習中でも必要に応じて視聴ができるようにした。また,工業高校向けに工程や機材を検討し,加えて実習だけでなく伝統的技術を学ぶためのスライド教材や資料を制作し,座学も設けた。生徒へのアンケートや現職教員へのインタビューからこれらが現在の教育環境に適しており効果的であることわかった。 また,現職教員に対し考案した方法を用いた講習会を実施した。教員にとっても金属加工技術や伝統的技術を再度見直す機会となった。また授業への導入にも関心があり,提案した作業方法や講習に対する評価が高いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鹿児島県指定伝統工芸品の刃物をモデルにしたものづくり教育の教材開発として,昨年度の内容を検証し,さらなる最適化を行った。特に,金属組織や硬さの評価から熱処理工程を見直した。従来は,耐火煉瓦による簡易的な加熱炉考案し用いていたが焼入れ時にマルテンサイト組織を安定的に得られないことが分かったため,作業性を担保しつつ炉内容積を拡充でき,入手の容易な側溝資材を用い,さらに鋼管を容易な加工で送風効率を高める手法を考案することで,安定した熱処理が行え刃物としての品質が得られえる作業方法を見出した。また,鍛造,刃付けや熱処理など各工程の作業に関する動画教材も制作した。これらの評価は,コロナ禍の影響により工業高校での実践授業を通して行った。結果,生徒へのアンケートから生徒の興味関心を誘起,技能の向上に寄与したことが示された。また教員へのインタビューから考案した教材が現在の工業高校のでも通用するものであり,導入も現実的に可能であるとの評価を得た。これらの成果は,学会発表および雑誌論文にて公表している。 さらに,現職教員に対して考案した教材をベースに刃物づくりを製作題材とした講習会を開催した。この際,現職教員の金属加工に対する知見や技術・技能が不足していること,講習会と通して教員としての資質向上があったこと,本教材が教員の立場からも興味・関心があることがわかった。さらに授業への導入にも関心があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も新型ウィルスの感染状況は予断を許さない状況であることを考慮し進めていく。教材化の実現に向け,令和3年度において実施した実践を通してさらなる工程の見直し,検討に取り組む。 まず,作業工程における作業法や治具等の再検討を実施する。特に,鍛造や刃付け作業において検討する。また,作業性の向上が製作工程に重きを置いてきたが,熱処理を通して鋼の材質が変化することも体験できるような実験的,体験的授業展開も検討する。加えて,現在は授業,作業の効率性を考え利器材を材料として用いているが,鍛接について学ぶ場面の導入の可否についても検討する。その仕組みや作業方法を製作題材に内包せずとも,伝統的技術や金属加工技術,金属材料の特性を関連付けて学べる授業の考案を試みる。 教員養成課程における金属加工技術の実習教材化も検討する。令和3年における実践等を通して現職教員から得られた意見をなどから,長期的視点から教員養成時期からの技術・技能習得が重要であることがわかった。このことから座学と実習との関係を深め,ものづくり教育の指導者として必要な技術・技能を習得できる教材の検討も行う。
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