2020 Fiscal Year Research-status Report
小学生のエネルギー概念の形成過程の解明と教授法についての研究
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20K02922
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
板橋 夏樹 宮城学院女子大学, 教育学部, 准教授 (90733212)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 理科 / エネルギー概念 / 小学生 / 教授法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,2020年度,小学校の理科だけでなく、各教科の教科書に掲載されているエネルギーの用語の使用の実態について調査を行うことにしていた。新学習指導要領に基づいた小学校教科書が2020年度から使用されるため、最新の小学校教科書でのエネルギーの用語の使用の実態が明らかになると考えられる。理科以外の教科書では、食物に関する内容でエネルギーの用語が使われている可能性が高いと予想されるため、教科間のエネルギーの用語の使用における文脈の相違を明らかにしたいと考えた。 まず,戦後の各学習指導要領におけるエネルギー概念に関する記載内容に焦点を当て調査を行った。『学習指導要領理科編(試案)』(昭和22年)」では,小学校理科でヒトの体とエネルギーの関係,エネルギーの移動,エネルギーの変換,太陽(光)が持つエネルギーについて言及していた。また,小学校段階では音の学習をとおした音→電気へのエネルギーの変換,中学校段階では体内でのエネルギーや仕事とエネルギーの関係(つまり,エネルギーの保存)を扱っていたことを明らかにした。これについては『日本理科教育学会 全国大会論文集 第18号』で発表した。 次に,昭和26年~平成27年度までに発行された各年代の小学校の理科教科書を対象に,「エネルギー」の用語が使用された単元内容について分析し,その特徴をまとめた。これによると,昭和26年~昭和55年発行の教科書まででは,「エネルギー」の用語は全く使用されていなかった。平成元年度改定の学習指導要領に準拠した平成4年発行「新しい理科 4上」(東京書籍)では,光電池の利用に関する読み物資料の中で初めて用語「エネルギー」が登場していた。これについては「理科教育学会第59回東北支部大会」で発表した。 現在,各教科教科書における用語「エネルギー」の記述内容の特徴をまとめた論文を学会誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新学習指導要領に基づく全教科の教科書の入手に思った以上の時間を要したため,これらの分析に時間がかかっている。また,児童を対象としたアンケート調査を想定しているが,研究計画を立案した当時には想定していなかったコロナ禍がある。コロナ感染の影響により,学校現場における学習時間の確保の困難さから,アンケート調査を実施することが困難な状況にある。このため,現在,調査協力校の確保と調査方法の再検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,新学習指導要領における小学校の理科を含む各教科の教科書に掲載されているエネルギーの用語の使用の実態について調査を引き続き行っていく予定である。新学習指導要領に準拠した理科の教科書における用語「エネルギー」の扱いは変化しているようであり,教師用指導書を含めて,その教授法の扱いについて深く調べていきたいと考える。 児童を対象としたエネルギー概念の調査については,本研究テーマを計画した際に想定していなかったコロナ禍における各学校の学習時間の確保の問題から,その調査方法の若干の見直しを行いながら,児童のエネルギー概念形成過程の解明を行いたいと考える。 国内外のエネルギー概念の教授法に関する先行研究については,更なる分析を行う予定である。特に米国・英国の初等教育段階では,様々な形でエネルギー概念を導入する方向にあり,詳細な調査を行っていく必要があると考えている。日本の小学校段階の理科では,エネルギーの用語そのものを扱わない傾向にあるが,海外では異なっており,特に生物分野を中心とした導入方法にその着想を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において学会の発表会がオンライン開催に変更になったことにより交通費が不要になったこと,購入した教科書一式の価格が想定したよりも若干安価であったことが理由である。繰り越された額は,エネルギー教育に関係する図書購入経費に充てる予定である。
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