2021 Fiscal Year Research-status Report
歴史教育における対外認識と自国認識の一体的な育成に関する日独比較研究
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20K02925
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 公 明治学院大学, 心理学部, 准教授 (90323229)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歴史教育 / 社会科教育 / 対外認識 / 自国史 / 外国史 / 世界史 / グローバル化 / 歴史総合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル化が一層進展する現代社会にあって、国民の育成に貢献しうる歴史認識の育成を図るため、対外認識を育成する外国史と自国史との一体的な把握を実現する歴史教育論の理論的基盤を探究する基礎的研究である。 令和3年度は、日本の対外認識の現状と課題抽出に関わり、高等学校での履修が始まった新科目「歴史総合」の目指す学習目標の具体的なあらわれとして教科書等具体的な歴史記述及び史資料とその扱い、学習計画を事例として、グローバル化が進む近現代史の教科書記述に現れた外国史と自国史の相互接続に関する分析・検討を行った。 以上の課題に関して得られた成果は、以下のように整理される。 新科目「歴史総合」では、近現代の歴史の学習内容の焦点化を図るため、現代的な諸課題につながる歴史的な状況を捉える観点として「自由と制限」「富裕と貧困」「対立と協調」「統合と分化」「開発と保全」などを提示している。この5つの観点は、国民国家の内部や国家間の関係とそれを取り巻く歴史的事象とその変化を捉えるための有効な視点である。これらを例に設定、把握される課題に基づく学習活動は、地図活用による空間的な広がりとその変遷の把握、国民国家の多様な表れとその違いに基づく「問い」の創造、「問い」の追究や解決への過程における多様な史資料の活用とその考察、説明、議論といった、「社会的事象の歴史的な見方・考え方」を獲得するための一連の学習活動として組織される。同時に、近現代の歴史の学習において、国民国家の成立は、その成立前後を挟む近代世界の社会的状況において「国民」や「国家」のあり方とその多様性への認識を必要とする。このうち、グローバル化の有する地球規模の空間的なつながりの成立とその変遷、変容を捉えるには、それぞれの「国家」の範囲、制度への認識とともに、それらを成立させてきた歴史的経過への理解を必要とすることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度は、研究期間を通してコロナ禍による海外渡航制限、学術機関の利用制限に加え、ロシアのウクライナ侵攻によるポーランド含む東欧の政情不安のため、ドイツ及びポーランドでの現地調査とこれに向けた資料収集が困難となる状況にあった。そのため、今年度の中心的課題であったドイツとポーランドの歴史学習におけるそれぞれの扱いを事例として、国土の変遷を事例にした通史学習及び課題探究学習における、外国史と自国史との相互接続による一体的な把握と認識育成に関する比較考察を行うための作業には取り組めず、日本国内における歴史教育の現状の整理、考察にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、大きな遅れをとることとなった令和3年度までの研究達成状況と残された課題への対応に注力する。これまでの活動に続き、ドイツ及びポーランドの歴史教育における学習目標・内容・手法・教材に関して、両国の共通歴史教科書の記述並びにその作成過程にあらわれた理論的な基盤に関して調査、分析を行う。 並行して、渡航条件の緩和が見込めない場合も想定し、両国の歴史教育における「国土」歴史事象の記述内容と学習課題、学習活動及び教材の有する特徴の相互比較の対象とする、中等教育前期段階における歴史教科書・歴史学習の目標・内容・手法・教材・教師用指導書・及び教授法に関する検討範囲の絞り込みを行うなど、研究計画の修正、見直しも含め、現状の環境下で可能な研究活動を優先して推進する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、コロナ禍での渡航制限に加えロシアのウクライナ侵攻によるポーランド含む東欧の政情不安のため、研究活動の中核と位置づけた現地での研究活動に困難が生じた。そのため、旅費については現地での調査機会が得られず計画通りの執行とはならなかった。 令和4年度は、渡航制限及び政情不安という状況下で可能な資料収集と分析を引き続き進めつつ、制限緩和後の調査活動への取り組みを見据え準備を進める。
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