2023 Fiscal Year Annual Research Report
歴史教育における対外認識と自国認識の一体的な育成に関する日独比較研究
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20K02925
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 公 明治学院大学, 心理学部, 准教授 (90323229)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歴史教育 / 社会科教育 / 対外認識 / 自国史 / 外国史 / 世界史 / グローバル化 / 歴史総合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル化が一層進展する現代社会にあって、国民の育成に貢献しうる歴史認識の育成を図るため、対外認識を育成する外国史と自国史との一体的な把握を実現する歴史教育論の理論的基盤を探究する基礎的研究である。 最終年度となる令和5年度は、研究の総括に向け、国内外の調査を通じた資料収集に基づく分析、検討を行った。国外では、ドイツ及びポーランド両国家間の歴史的経験を象徴する、公共空間に遺された歴史遺構や史資料を活用した歴史教育プログラムを中心に調査を行った。国内では、高等学校地理歴史科「歴史総合」に引き続き、履修が開始された選択科目「世界史探究」を対象に、両科目が接続、連携し、一体的に体外認識の育成を担う科目としての性格に基づく学習目標・内容、教科書の歴史記述及び史資料扱いについて調査を行った。 以上の取り組みより得られた成果は、以下のように整理される。 過去数世紀にわたり独波両国家間で領有権が争われた領邦に遡る空間認識を基盤に、歴史教育プログラムでは、歴史的な過程を経た一地域としての独自性ある文化と社会の歩みを強調する史資料と活動の具体を示すものであった。特に、地域社会の生活者でもある学習者の気付きを引き出す史資料そのものとなる、公共空間における歴史的表象物は、歴史事象と現実社会との「結節点」として、両国家に由来する社会の来歴を探究する「問い」の生成に向けた課題設定への積極的な志向を示す。 こうした事例は、学習者の現実社会とこれに基づく現在意識より出発した「問い」を深めていく過程において、現代世界の課題を自分事として設定しつつ、歴史的事象として理解を深める学習過程の一つのあり方を示す。これは、「世界史探究」が、「歴史総合」にて5つの観点より捉える現代的な諸課題の捉えを基盤に、学習者の現実社会に見られる社会的事象より出発、遡及し、歴史事象に自ら迫る学習過程と重なるものである。
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