2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K02933
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 毅 筑波大学, 大学研究センター, 准教授 (10233800)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大学マネジメント / 建学の精神 / 大学職員 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、建学の精神をめぐる高等教育政策の動向、マネジメント現場における大学職員による建学の精神の認知・関与等に関する定量分析、インテンシブなフィールド調査を中心とする研究活動を実施した。 第一に、建学の精神に直接関連する公的政策として、大学ガバナンス改革の動向について検討を行った。そこでは、大学の公共性に対する要請が高まっており、建学の精神に基礎づけられた非営利団体としての大学の自主性を制約する方向に議論が進められている。第二に、ボトムアップ型のマネジメントにおける建学の精神の重要性について位置づけを行うと共に、建学の精神に対する大学職員の認知及び関与等の状況について、平成31年に実施したインターネット調査の結果の再分析を実施した。その結果、定性的な議論を通じてこれまで指摘されていた、建学の精神に対する大学職員の関心・関与の度合いの低さ等について、定量的に明らかにすることができた。第三に、このような問題状況に対する効果的な新たな分析視点として、経営学におけるストーリーテリングの技法に着目し、マネジメント手法としての可能性を視野に入れつつ検討を開始した。 インテンシブなフィールド調査として、第四に、私立大学の経営責任者(学長、理事長)に対するインタビュー調査を実施した。例えば約20年前に新設されたA大学では、新たなデジタル社会の姿とそこで求められるクリエイティブな人材に関する明確なビジョンを有する創設者(学長)によるリーダーシップのもと、意欲的なマネジメントが展開されている。具体のイメージを伴う抽象的理念は、硬直化し形骸化したスローガンではなく、時々の経営課題に応じて新たな魅力的な「言葉」を生み出しながら、組織を牽引するという重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連性の高い政策動向の分析やマネジメント現場における建学の精神の認知・関与等の動向分析、およびインテンシブなフィールド調査は順調に進んでおり、令和3年度以降も継続的に実施する予定である。 私立大学の中期計画の分析については、新型感染症の拡大防止のために研究補助者の確保が難しく、今年度は組織的に展開することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
建学の精神への関与を中心とする大学職員の働き方や意識について、先行調査のデータ再分析を進めると共に、本研究を通じて構築を進めつつある新しいマネジメントモデルを核とする新規調査の設計を行う。 私立大学が立案した中期計画の分析作業については、令和3年度以降、状況の好転を待って組織的に展開する予定である。 インテンシブなフィールド調査について、建学の精神の具現化につながる理論(3つの行動仮説モデル)を分析の視点として具体事例を蓄積するとともに、仮説モデル自体の修正、精緻化と発展的展開を並行して行う。 最後に、建学の精神の具現化を通じた大学の発展を目指すさまざまな試行錯誤や、建学の精神をうまく活用したマネジメントについて、そこで何が行われていたかを説明することに加えて、いかにしてこれら取り組みを効果的に進展させているのか。そこで用いられている有効なマネジメント手法についての分析と定式化(連結化)を行う。
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Causes of Carryover |
新型感染症の拡大防止のために、遠隔地への出張および研究補助者の雇用を行うことができなかった。 状況の好転を待って、早期に必要な活動(出張を伴う調査研究および研究補助者による作業)を再開する。
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Research Products
(1 results)