2020 Fiscal Year Research-status Report
私立大学の存続価値と外部環境への対応能力に関する財務的側面からの実証的検証
Project/Area Number |
20K02958
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Research Institution | Toyama College |
Principal Investigator |
篠田 隆行 富山短期大学, その他部局等, 准教授 (60846591)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 私立大学財務 / 特定資産 / 大学経営 / 高等教育進学率 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、18歳人口の著しい減少は、財政的な経営基盤の大半を学費収入に依存してきた多くの私立大学に対し大きな影響を及ぼしている。その一方で、国立大学は平成16年の法人化後、各大学で様々な改革が実施され、その帰結として、経営の効率化を趣旨とする一部の大学間の統合が実現されつつある。 このような状況は、高等教育への進学率向上という点で量的供給における国立大学の補完機能を担ってきた私立大学にも大きな影響を及ぼし、我が国全体の高等教育システムの変容をも意味している。仮に国立大学法人の経営統合が加速し、国立大学の存在しない自治体が出現することになれば当該都市の衰退につながる事態も想定され、地域における私立大学の存在意義も変容するのは自明のことである。 そこで本研究では、日本の高等教育システムが大きく変容する過渡期において、各私立大学の財政面、とりわけ内部留保に着目するとともに、高等教育に進学する際の地域移動の動態を分析することにより、18歳人口の減少をはじめとする外的要因への対応能力について解明し、私立大学の存続意義の再検証及び理想とする財務基盤モデルを提唱することを目指している。 そして、研究目的の達成のため、以下に示す3つの課題を設定している。1.私立大学の内部留保の平成27年度から令和元年度までの5カ年の増減推移を検証し、存続価値としての経営の安定度を解明。2.東京23区私立大学の定員増抑制がもたらす、進学行動と地域移動の解明。3.都道府県ならびにエリアにおける影響の解明、の3点である。 さらに、研究期間の初年度となる令和2年度は、新型コロナウィルス感染に伴い高等教育への進学事情が大きく変容する兆しが発生したことから、分析する対象年度を2カ年分追加し、各私立大学の財務行動、ならびに18歳人口の高等教育進学の変容を追加的課題として調査・研究することとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の対象期間となるデータの取得は予定通り整備した。 一方、個別具体的な事例についてのヒアリング調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染に伴い、インタビューの実施ができていない。ただし、今後の研究期間内に実施することで補完する予定である。 一方、新型コロナウィルスの感染に伴う影響は、本研究のテーマとも大きく関係することから、当初の計画では、私立大学の令和元年度までの財務データを基に分析する計画であったが、研究成果の更なる効果をあげるために、令和2年度以降のデータも追加で検証することとした。なお、データの収集については、従来の方法と同様で実施することが可能であることから問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度において整備された対象期間の財務データに基づき、私立大学の内部留保の5カ年の増減推移についてその動向を分析することに加え、新型コロナウィルス感染により、高等教育機関への進学行動は大きく変容すると想定されるため、収集する財務データの対象期間を拡大する。 具体的には、令和2年度・3年度の決算数値を追加で補足することにより、各私立大学が、新型コロナウィルスの感染に伴い、特定資産をはじめとする内部留保をどのように活用したのか、あるいは学費問題にいかに対応したのかを解明する。 また、都道府県単位、首都圏単位などのエリア別の集計を実施するとともに、18歳人口の地域別移動状況と組み合わせて分析する。 さらに、財務的に特筆すべき安定度を有する大学を抽出し、実際に財務・入試両者の実務担当者に内部留保構築への意思決定プロセスや計画の有無をヒアリングすることでその戦略を明らかにすることを計画していたが、それに加え、新型コロナウィルス感染に伴う意思決定ならびに戦略の変更等についてもヒアリング項目として追加する。
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Causes of Carryover |
令和2年度はヒアリング調査のための旅費を計上していたが、新型コロナウィルス感染に伴い、移動の制限が発生したことから、ヒアリング調査を実施することができなかった。そのため、旅費として計上していた予算がほぼ次年度へと繰越となった。
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