2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K02963
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
上田 紀行 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40211768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 直亨 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80273720)
室田 真男 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (30222342)
中野 民夫 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (10631905)
岡田 佐織 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (50833208)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リーダーシップ教育 / 支援型リーダーシップ / 高等教育 / 学修成果の可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、支援型リーダーシップを扱う大学院修士課程における授業科目の効果を検証し、大学院でのリーダーシップ教育の効果を明らかにすることを目的としている。 令和2年度および3年度は、授業の開始時および終了時に質問紙調査を行い、効果検証のための尺度開発を行った。令和2年度は予備調査とし、令和3年度に項目改訂と本調査を実施した。質問紙調査から、リーダーシップのタイプとして「意見聴取型」「率先型」「支援型」「統率型」「マネジメント型」の5つの因子が抽出され、尺度構成を行った。本研究で対象とする授業では支援型リーダーシップに焦点を当てた教育を行っている。すべてのリーダーシップタイプにおいて授業後にリーダーシップ行動が増加する傾向が見られた。特に、「自分の行動や成果について、メンバーからの率直なフィードバックを求めるようにしている」「主体的に取り組まない人には注意する」「仲間のやる気を引き出す」「グループの学習の目的を明確にして,仲間と共有する」「グループ作業では、先頭に立って仲間を引っ張っていく」「全員が発言しやすい雰囲気づくりを心がける」等の項目で、授業に伴う増加が見られた。 基礎科目で高得点を修め、上級科目へと進んだ学生からは、基礎科目での授業開始前後、上級科目での授業開始前後の4時点のデータが得られている。「仲間のやる気を引き出す」「グループ内で意見が対立した時には、合意形成のために働きかける」といった項目で継続的な上昇が見られた。ただし、多くの項目では授業開始時点において既に高得点を示しており、天井効果が発生していた。上級科目の履修者に対しては、意識面だけでなく、育成目標になっている個々のスキルの修得状況も確認できる質問項目の追加が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の予備調査結果を踏まえ、効果検証のための尺度開発を行い、授業前後の意識変化を確認した。 リーダーシップ教育の効果を一定程度確認できた一方で、調査項目の不足および授業設計上の課題も明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
授業中のグループワークやレポート課題の中で、学生が自身のリーダーシップ経験の振り返りとして挙げるのは、ほとんどの場合、アルバイトやサークル、高校・中学時代の部活動であった。一方、本授業で取り扱う支援型リーダーシップやピアレビュー、ファシリテーションのスキルの発揮場面としては、研究室での活動が期待・想定されていた。学外・課外活動でのリーダーシップの発揮を否定するものではないが、当初の想定に比べて事例として登場する頻度には想像以上の偏りがあり、この点において、授業実施者の狙いと学生による受け止めの間にはギャップがあると思われる。これまでに実施した学生対象のインタビュー調査でも、研究活動の中で支援型リーダーシップを発揮するという視点が学生の中で意識されていないことが明らかになっており、リーダーシップ教育と研究活動が結びつかない要因として、「研究は個人で行うもの」という意識や、相談相手が指導教員のみとなっている研究環境が影響していると考えられる。そのため、研究活動における支援型リーダーシップの発揮は、研究活動に対する捉え方の更新と、研究の文脈に沿った形での授業実施の両面から取り組む必要がある。 そこで、本年度は、研究活動におけるリーダーシップ、ピアレビュースキル、ファシリテーションスキルの発揮にフォーカスしたアンケート調査およびインタビュー調査を実施し、本年度の研究で抽出されたリーダーシップの諸側面が、研究活動の中でどのように発揮されるかを明らかにしていく。それらの調査結果をもとに、研究活動にも資するようなリーダーシップ観の育成を可能とする授業改善を行うことを目指す。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウィルス感染対策のため、授業がすべてオンライン実施となったことから、質問紙調査もオンラインでの実施となり、当初予定していた印刷・データ入力等の費用は発生しなかった。 使用計画:学生インタビューの謝金、インタビュー議事録の作成費
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