2021 Fiscal Year Research-status Report
教養知とその形成―その比較分析と教養教育の類型化の実践的検証
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20K02979
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
兵藤 友博 立命館大学, 経営学部, 授業担当講師 (20278477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋吉 恵 立命館大学, 共通教育推進機構, 教授 (00580680)
河井 亨 立命館大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20706626)
中村 正 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90217860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教養教育 / 教養知と専門知 / 実践知・臨床知・総合知 / 地域社会における知性 / セルフ・オーサーシップ / 21世紀社会と知性 / 社会的公正 / 教養文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本科研主催の教養教育研究会を6回、教職員・学生を含む教養知のサロンを1回、開催し、教養知の形成について、現下の教養教育展開の局面を多面的に取り上げ、考察した。スピーカーは、本科研メンバーを含め、他大学および立命館大学の教員をゲストスピーカーとして招聘し開催した。内容を列挙すると「大学における社会的公正教育の意義と課題」、「人権教育科目群を活用した新たな展開」、「社会的公正をめざす教育に関する研究『ジェンダーとダイバーシティ』」、「アカデミックな知と『地域』の連携により形成される教養知」、「『勤労青年』の教養文化史に関する研究と、教養科目『メディアと現代文化』の教育実践」、「『教養知』とは何か―哲学の視点から」、「21世紀社会に求められる『知性』」であった。 個別分担者の実績は以下の通りである。 ①DV、虐待、ハラスメント等の対人暴力に関わる専門職者にも役立つように、筆者の臨床社会学の実践から、単なる事例検討や事例運びではなく、ケースフォーミュレーションやケースセオリーを構築する「実践の知・臨床の知・総合の知」として自らの臨床対人援助実践があることを明確にするための理論化を試みた。 ②コロナ禍での大学における社会と関わる教育実践についてのアクションリサーチを継続するとともに、当該教育実践を経験した卒業生へのインタビューを通して、地域社会と関わる経験が、専門知を社会で活用するための力について考察を重ねた。 ③学習プロセスにおける対他関係=対人関係でのリーダーシップの成長と、対自関係でのセルフ・オーサーシップの成長を整理する作業をおこなった。 ④21世紀社会に求められる「知性」とは何かについて、教養知関連のレビューを行ない整理を行った。また、日本の大学等の学術研究体制の発達段階について、とくにこの20年余りの展開について分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の中、教養知形成に関して、対面での研究会場の設定を行なう一方、遠隔リモートシステムを多用して、研究会・サロンを開催した。 その達成状況は、まだ途上段階であるが、「研究実績の概要」欄に示した通り、教養知のレビューによる全体像への接近、ならびに科研メンバー外のゲストを招聘し、多面的に個別的アップローチを行なうことで、他大学における教養教育の実際について、そしてなお、そこに見出される教養知の新しさ、課題を部分的に整理することができたと考えられる。 また、分担者が提起している課題についても「研究実績の概要」欄に示した通り、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の見通しは今年度も昨年度と同様と思われる。したがって、教養知形成に関して、対面での研究会場の設定を行なう一方、遠隔リモートシステムを多用して、研究会・サロンを開催していく。そうすることで、本科研メンバーはもちろん、他大学の教養教育について新たな取り組み、アップロ-チをされている研究者をゲストとして招聘し、本科研が目指している課題、教養知の形成の概念的整理、教養知を形成する内容、ならびに授業・学習プロセスに実際に横たわる問題について取り組む。教養知のレビューを引き続き進め、整理する。 個別的には、①仕事に活きる教養の知という課題で研究をすすめる。大学院修了生へのインタビュー調査を行う。対人援助に関わる臨床系の大学院修了生たちのスーパーバイザーを務めており、その機会を利用する。社会人の臨床実践にそくして、専門的な知に基づくだけではない知的作業としてケースセオリーやケースフォーミュレーションを内的に構築している様相を観察し、そこに作用している知を「教養の知」として取り出す観察を行う。学部や大学院での専門知の習得はもとより、それ以前に獲得した非専門の知との関連にも焦点をあてる。 ②Witコロナにおける社会と関わる高等教育実践についてのアクション・リサーチを継続するとともに、社会と関わる高等教育実践を経験した社会人へのインタビューを通して、地域社会と関わる経験が育む力を育む可能性を検証する。 ③これまでの対他関係=対人関係でのリーダーシップの成長と、対自関係でのセルフ・オーサーシップの成長の整理を踏まえて、知的成長について明らかにする。そしてなお、教養教育の知識との関係での成長、意味づけを分析する。 なお、最終年度を迎え、本年度の研究会等の企画を進めるとともに、(仮)『教養知の形成』としてこれまでの科研の成果をまとめ、その知見を広く普及する出版企画に取り組む。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の中で、本来なら調査出張旅費、学会発表出張旅費、また専門知識の提供をしていただく招聘講師等の旅費を含め、旅費が支出されるところである。だが、遠隔リモートシステムの利用によって旅費予算を、一部例外もあるが、使用することなく科研費の研究等の活動を展開したため、次年度使用額が生じた。 この次年度使用額についての使用計画は、当初も最終年度に3年度にわたる成果をとりまとめることにしていたが、出版企画事業として取りまとめ作業を整理し、広く研究成果を発信する予算として充当する。
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