2021 Fiscal Year Research-status Report
The method of causing active learning for Special Need Educaion Teacher Training Course student:contets and form
Project/Area Number |
20K02991
|
Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
村上 由則 東北福祉大学, 教育学部, 教授 (90261643)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 病弱教育 / 肢体不自由教育 / 教材開発 / 授業研究 / 障害理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は2020年度からのコロナ感染症拡大が続き、対面場面での教材作製や模擬授業の内容・方法の検討が制限された。そこで研究対象をオンライン及びハイブリッド形式授業を前提とした「教材開発」と「授業内容・方法」の検討へ移行することとした。 ①疾患・障害機序の理解と生活行動上の困難・主観的不安感を擬似的に体験するための自作教材の検討:学生の理解促進のために意図的に活用する場面を「状況モデル教材」と想定した。受講学生が、コロナ感染症拡大状況下で体験する困難や不安と、慢性疾患患者・重度運動障害者の遭遇する困難等とを類似する「状況モデル教材」として構成した。例えば、授業がオンライン形式から対面形式へと移行する場面を長期入院児が在席学校に戻る場面で遭遇する「期待」「不安」などの経験などについて、受講学生が当事者意識をもって主観的に体験する「状況モデル教材」として構成できることが示唆された。 ②疾患・障害機序の理解と生活行動上の困難・主観的不安感を理解し、指導・支援方法を自ら研究開発・実践する資質を育成する授業内容・形式の検討:コロナ感染症拡大に伴いオンライン活用が一般化し、重症慢性疾患患者や医療的ケアを常時必要とする患者とのオンライン交流が、容易となった面がある。そこで、現職教員による要医療ケア児への教育実践をオンライン・リアルタイムで、学生が視聴可能となった。それにより「子どもの僅かな変化」「医療的ケアの実際」などについて、擬似的ではあるが画面上で「体験」「体感」する機会を確保できた。この「状況モデル教材」により、観察の精緻さ授業の難しさなど、具体的な指導・支援法のイメージをより強く持つことができた。教育実践の場面と学生への指導内容・質問等を的確に組み合わせることで、「教材」としての精度を高めることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①授業内容形式および教材開発に関する課題:本研究は対面授業・研修等の場面を主として活用し、教材作製と模擬授業を基盤として、障害理解を促す授業形式・内容等の検討を目的としている。対象は特別支援教育専攻学生や現職教員であり、参加者相互の評価等を組み込んで、授業内容・方法・形式および作製した教材に関する改善を繰り返しつつ目的に迫るものであった。しかしながら2021年度も前年同様にコロナ感染症拡大により実物教材の作製、模擬授業の実施、参加者間の相互評価も、当初の研究計画に沿って実施できない状況が継続した。そこでこの状況を逆手に取り、オンライン・ハイブリッド授業の形式を意図的に活用した「状況モデル教材」の構成を試みた。とは言え、授業進行は研究者である担当教員の主導であり、また、受講者の主体的な「状況モデル教材」の設定は困難であった。しかし一方、従来であれば理解し難い、病気等の管理のために必要な生活上の規制やその維持の難しさについて、受講学生は主観的困難感・不安感を含めて体験・体感することが可能となった面もある。 ②自作教材や授業内容・形式についての情報交流に関する課題:本研究では教材や授業内容等に関して、研究者等及び疾患・障害当事者との情報交流を行い、洗練・充実させることを目的としている。2021年度はオンライン形式での交流が一般化することで、当事者の授業参加や現職教員の実践場面の視聴が容易となった。このことは、コロナ感染症拡大を機に対面状況を当然のこととしてきた従来の場面設定が、結果として疾患・障害当事者との交流やその社会参加の困難を引き起こしてきたことを明らかにした。つまり参加困難について、障害の「社会モデル」の重要性を理解する素材となったと言える。しかしこれは意図しない感染拡大が生み出したものであり、「状況モデル教材」として構成には、より綿密な検討を今後必要とする。
|
Strategy for Future Research Activity |
①授業内容形式および教材開発に関する課題改善と推進方策:2022年度もコロナ感染が続いており、そのため、2021年度での取り組みの中心となったオンライン・ハイブリッド形式での授業を前提に、慢性疾患患者・重度運動障害者の困難理解を促す「状況モデル教材」の構成を中心に研究を推進する方向で取り組む必要がある。その中で、コロナ感染症による一般的な生活・行動上の「制限」と慢性疾患患者等の体験する治療・管理上必要な「制限」「困難」の内容・形式の類似性等を整理検討し、病弱教育・肢体不自由教育の視点を明確にした「状況モデル教材」の構成を試みる。合わせて、受講者間での「状況モデル教材」の相互評価や各自の視点での教材の構成・開発の試みを授業展開の中に導入する。②自作教材や授業内容・形式についての情報交流に関する課題改善と推進方策:情報交流に関する課題の改善についても、コロナ感染症拡大が2022年度も続くことを前提とする必要がある。コロナ感染症拡大を契機として、オンラインミーティング等が一般化し、研究者・実践者間の教材や授業評価・検討に関する情報交流についても、Web上で実施する抵抗感はほとんど無くなった。そこで、情報交流の実施の頻度を高くすることで、教材や授業内容・形式等をより「障害理解」に即したものとすることが可能となると考える。また疾患・障害当事者とのWeb上での意見交換、リアルタイムを含む動画等を含めた実践活動の共有への意識的な抵抗感も低減してきており、適切なセキュリティ管理を行ったうえでの各種の情報交流も、従来よりは積極的に展開することが可能となっている。
|
Causes of Carryover |
2021年度において、11,640円の次年度使用額が生じた。これは、研究に活用している「特別支援教育ユビキタスシステム」の改修経費が、予定よりも安価となったためである。 次年度・2022年度においては、これを研究対象である「障害理解教材」の作製素材の購入経費に充当する予定である。
|
Research Products
(2 results)