2020 Fiscal Year Research-status Report
Cognitive characteristics and preference in people with autism spectrum disorder
Project/Area Number |
20K02994
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
藤野 博 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (00248270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 英嗣 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (50711595)
日戸 由刈 相模女子大学, 人間社会学部, 教授 (40827797)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 認知特性 / 言語コミュニケーション / 選好性 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校の2年生から6年生までの自閉スペクトラム症(ASD)の児童16名と定型発達(TD)の児童17名が研究に参加した。以下の4つの実験をオンラインで実施した。 (1)言葉の好みについて検討し、以下の知見が得られた。①TD群はASD群よりも有意に渾名で呼ばれたかった。②ASD群はTD群よりも有意に好きな言葉があった。③ASD群のみ、二次誤信念課題を通過した児は有意に心に言及した詩を好んだ。 (2)依頼における言語表現の丁寧さと情報提示における言語表現の詳細さについて検討し、以下の知見が得られた。ASD群では自閉特性が強いほど丁寧な表現を選ぶ傾向があった。ASD群では負担が大きくない場面で、心の理論があるほど丁寧さが少ない、すなわちカジュアルな表現を選んだ。TD群では負担が大きい場面で、心の理論があるほど丁寧な、すなわちフォーマルな表現を選んだ。細部に注目する傾向は丁寧さの選択に関係しなかった。詳細さについては、ASD群は部分に注目しやすい中枢性統合の弱さがあるほど詳細な言語表現を選ぶ傾向があることが明らかとなった。 (3)図形アニメーションを提示し、設定した選択肢から語句を選んで文章を完成させる作文課題を実施し、以下の知見が得られた。TD群では心的状態の表現が心の理論に関係する傾向がみられたが、ASD群ではみられなかった。 (4)刺激を瞬間的に提示する条件で、注意が全体よりも部分に向かいやすいかどうかを検討し、以下の知見が得られた。ASD群はTD群よりも部分に注目するという仮説は支持されなかった。同時に、TD群が部分よりも全体に注目する傾向もなく、いずれの群においても部分に注目した児も全体に注目した児も同程度にみられた。刺激図版の瞬間提示という思考が媒介しにくい条件においても中枢性統合理論からの予測とは異なる結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症予防のため、当初予定していた対面での実験を実施できなかった。それに代え、オンラインによって実験を行った。オンラインで参加できる児童に対象が限られたため、応募者が当初の予想よりも少なく、十分な数のデータが取得できなかった。また、対面実験で行う予定であったアイトラッカーを用いた視線計測も行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に実施した実験課題に基づき研究用のソフトウェア(言語選好性アセスメントツール:基盤アプリケーション,作文課題アプリケーション)を開発・作成した。このソフトウェアは対面実験のみならず、オンラインでも実施とデータの取得がしやすいように作られている。2021度は、このソフトウェアと心の理論課題、全体/部分課題などの認知課題をASDとTDの小学生を対象として実施し、文章表現の選好性と認知特性の関係について検討を行う予定である。新型コロナウイルス感染予防を徹底して実施するが、参加者の健康への配慮を優先し、感染拡大状況によっては昨年度と同様にオンラインで実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症予防のため対面実験を中止した。そのため、視線測定機器を使用する必要がなくなったため、視線分析ソフトウェアの購入のために計上した予算を執行できなかった。次年度以降もそれを使用できる状況になる確実な見通しはないため、そのための費用は、本研究で実施する実験課題をオンラインでも実施しやすくするためのソフトウェア(言語選好性アセスメントツール:基盤アプリケーションと作文課題アプリケーション)の開発費として使用した。しかし、視線分析ソフトウェアの購入費よりも低価格であったため残額が生じた。加えて、コロナ禍の影響で実験データが十分に取得できなかったこと、学会がオンライン開催になり出張による旅費が発生しなかったこと、などの理由により残額が生じた。2021年度はオンライン実験用に開発したソフトウェアを活用し、より多くのデータを取得するために2020年度の残額と2021年度の交付額を使用したい。
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