2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K02997
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
井坂 行男 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (40314439)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 聴覚障害児教育 / 言語学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は聴覚障害児教育における最重要課題である「9歳レベルの壁」を解決するための包括的言語学習支援方法を開発することである。小学校国語科教科書の語彙の出現頻度を踏まえて、抽象的な語彙の語彙そのものの抽象性、多義性、語彙の概念関係等の分析においては語彙相互の概念的な関係性を重視した検討を加えた。音声言語から書記言語への形態移行に関わる言語知識等の分析を実施し、具体的にどのような言語知識を習得することが必要であるかの分析検討と支援方法について検討した。また、聴覚特別支援学校小学部児童を対象に、絵画語い発達検査及び読書力診断検査を実施した。その結果、絵画語い発達検査結果においては約15年前の小学部児童の結果よりも学年別の平均語彙年齢が各学年で1歳から2歳近く上昇していること及び標準偏差は各学年共に同様の結果で1歳から2歳であったことが示唆された。また、読書力診断検査結果は読書力偏差値が各学年の平均が45~53の範囲であり、概ね普通程度の範囲であった。読字力評価点は普通程度で、語彙力・文法力・読解力の評価点は普通程度からやや劣るの範囲であったことが示唆された。これらの語彙力及び読書力の結果と従来の同様の検査結果との比較から習得が促進された背景(聴覚活用・手話の併用・教育方法等)を検討すると共に、習得がより促進された語彙及び変わらず習得が促されにくい語彙や読書力の下位検査の結果も踏まえて、語彙等の習得特性に応じた包括的な言語学習支援方法を検討していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度においても新型コロナウイルス感染症の拡大等によるコロナ禍の中で感染症拡大防止の関連から、また、学校教育現場における聴覚障害児の学習時間や学習機会の確保等の観点から、聴覚障害児の語彙力及び文法力の調査実施が非常に厳しい状況であった。しかし、学校及び保護者等の協力が得られたことにより年度末にこれらの検査を実施することができた。現在はこれらの調査結果の詳細な分析に取り組んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症対策が一応の収束をみたことから、聴覚障害児の語彙力や文法力に関する言語力調査においては対象児数を増やすために、可能な限り検査の実施に関して、学校に協力依頼をする。これらの結果も踏まえながら、国語科教科書の語彙分析の結果に基づく、聴覚障害児に対する包括的な言語学習支援方法を検討する。
|
Causes of Carryover |
昨年度も含めて、研究の実施遂行において、新型コロナウイルス感染症拡大によるコロナ禍が生じていたために、学校現場に対する調査及び出張等は感染防止の観点から、控えたことから、調査のための旅費や調査結果の分析のための人件費等の支出が最小限となった。
|