2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K02997
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
井坂 行男 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (40314439)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 聴覚障害教育 / 言語学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は聴覚障害児教育における最重要課題である「9歳レベルの壁」を解決するための包括的言語学習支援方法を開発することである。聴覚特別支援学校小学部児童76名を対象とする言語力検査(絵画語い発達検査、読書力診断検査)結果は、絵画語い発達検査ではこの15年間の間に各学年の平均語彙年齢は1歳~2歳程上昇し、小学部1~2年生が語彙年齢6歳、同3~4年生が9歳、同5~6年生が10.5歳に上昇し統計上の有意差も示された。また、獲得しにくい語彙の傾向は語彙年齢が低い児童は日常生活での使用頻度の低い語彙が獲得しにくく、語彙年齢の高い児童は抽象性の高い語彙が獲得しにくい傾向が認められた。また、読書力診断検査結果では読書年齢の平均が小学部1~2年生では小2レベル、同3~4年生は小4レベル、同5~6年生では小5及び小6レベルで、統計上の有意差も示された。また、読字・語彙・文法・読解の下位検査は相互に高い相関が示され読字力は評定が他の下位検査よりも有意に高かった。 また、小学校国語科教科書の小1~小6までの語彙分析等を実施した。その結果、小1~小3では総語彙数が約54,000語彙で異なり語彙数が約3,200語彙であった。小4~小6では総語彙数が約198,000語彙で異なり語彙が約11,000語彙であった。さらに、小1~小3の異なり語彙のうち10回以上の出現語彙は約16%、1回出現の語彙は約40%で、小4~小6では同10回以上出現語彙は約13%で、1回出現の語彙は約45%であった。これらのことから、小学部段階の聴覚障がい児の言語力の向上が認められたことを踏まえても、従来通りの丁寧な言語学習に取り組むととともに、日常生活での使用頻度の低い語彙の習得を確認しつつ、小学部高学年段階では国語科教科書に1回出現の語彙や出現頻度の低い語彙で抽象的な語彙の習得を目標とすることが重要であると考えられた。
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