2021 Fiscal Year Research-status Report
ライトタッチコンタクトを活用した脳性まひ者の自助型動作支援プログラムの開発
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20K03000
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
船橋 篤彦 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 講師 (40432281)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 立位制御 / 脳性まひ / 重心動揺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,100g以下の力で指尖が物体に接触すること(Light touch contact: 以下LTC)が,脳性まひ者の姿勢制御・動作遂行に与える影響を検証し, LTCを活用した脳性まひ者への新たな動作支援プログラムの開発を目指すことである。 2021年度は,全3年間の研究計画の中間となる2年目であった。年度当初は,前年度より続く新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,実験計画の遂行に大きな支障をきたした。一方で,基礎データの収集という面で,成人を対象としたデータの蓄積に注力し,研究の推進に努めた。特に,LTC条件下における立位姿勢制御において,指尖接触の物理量が強く影響する可能性が示唆され,本研究が目指す動作支援プログラムの構築に向け,「最適化されたLTC」について検証を進めていく準備が整ったといえる。 以上の研究成果の一部は,2021年11月に開催された日本リハビリテイション心理学会において学会発表を行った(演題名:「ライトタッチコンタクトが立位姿勢の制御に及ぼす影響 -脳性まひ者が「自ら触れる」ことの効果検証に向けて-」)。本発表を受けて,複数の研究者と議論を行い,今後の研究展開や実験デザインについて,重要な示唆を得ることができた。 年度後半においては,脳性まひ者のデータ収集に向けた準備と予備実験を実施した。予備実験のデータから,対象者の立位能力だけでなく,歩行能力により,LTCの効果が大きく異なる可能性を示唆するデータが得られた。これにより,研究協力者の姿勢・動作の評価については,当初計画よりも緻密に実施することが必要であると判断した。この点については,従来の研究において十分に吟味されてきた要因とは言えず,本研究を通して新たな問題提起が可能になると考えている。 以上が,本研究の2021年度の研究実績概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」と評価した理由として,以下の2点をあげる。 (1)新型コロナウィルスの感染拡大に伴う実験環境の整備 2021年度については,前年度の遅れを取り戻すため,4月から実験開始の計画を立てていた。しかしながら,国内の感染者数が増大し,収束の見通しが立たない中で,難しい選択を迫られる結果となった。このような状況下で,成人を対象としたデータが集積できた点は前年度よりも進歩したと考えている。年度後半においては,脳性まひ者のデータ収集に取りかかるため,研究協力者の確保など算段を整えていたものの,新型コロナウィルスのまん延防止等重点措置の対象地域であったことが影響し,データの収集が進んでいない。この点については,研究最終年度に速やかに取りかかる計画である。 (2)実験実施が困難な中で,新たな知見につながり得る予備データを収集したこと 上述の状況から考えれば「(4)遅れている」と評価することも考えられたが,学術大会における発表と同領域の研究者からのレスポンスから,研究の方向性としては適切に進んでいることが確認できた。さらに,予備実験で得られたデータについては,研究計画段階で想定していた結果とは異なる知見も得られ,LTCを動作支援プログラムに活用するために,幾つかの追加実験を行う必要があることも判明した。このことは,研究の進捗に繋がると考えた。以上の2点より,本研究計画については「やや遅れている」と評価することが妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究を推進する上で,以下の3点に注力をしていきたい。 1)研究協力者の確保について:成人の研究協力者については,登録制として一定数の確保ができている。一方で,脳性まひ者の研究協力者については,個別に依頼をかける状況が続いていた。この問題を打開するために,周辺地域の当事者団体に研究趣旨説明を行い,研究協力の内諾を得るところまで漕ぎ着けた。今後も新型コロナウィルス感染症の感染状況にも一定程度の影響を受けることは否めないが,実験を実施する環境の整備(健康管理表の記入,消毒手続きの手順化などを含む)に努め,脳性まひのある研究協力者が安心して実験に参加できるようにすることが重要と考える。 2)国際学会におけるデータ発表について:予備実験で得られたデータについて,データ数が一定程度,集積されたことを踏まえて,国内外での研究発表に努めたい。特に,本領域の研究については,国外での研究知見が集積されている現状を踏まえると,渡航し,対面での研究議論を行うことが研究推進に大きく役立つと考えている。 3)研究補助者の積極的活用について:過去2年間は,実験が十分に実施できなかったことに伴い,研究補助者の業務を確立することが難しかった。これにより,研究補助の予算を十分に活用することができなかった。実験補助・データ収集・解析の処理速度をあげるため,大学院生等の研究補助者の積極的活用に努めることとしたい。以上の3点を中心に研究の推進に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
2021年度に執行予定であった予算科目のうち,「旅費」「人件費・謝金」については,新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,執行がままならない状況が継続した。これにより,次年度に持ち越す金額が発生する事態が生じた。次年度については,これまで以上に計画的な予算執行が必要となる。今後の研究推進に記した通り,2022年度は,これまでに集積したデータの整理等を中心に「人件費・謝金」を早期から執行できるよう準備を進めている。 また,夏期に開催される国際学会への参加準備を進め,「旅費」の執行に努めていく計画としている。加えて,2022年度に実施予定の脳性まひ者を対象とした観察研究において,当初の予定よりも必要となる物品(デジタルビデオカメラ等)が増加する見込みである。これらを含めると,2022年度は,適切に予算執行が可能であると考えている。
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Research Products
(1 results)