2020 Fiscal Year Research-status Report
読字困難児の読解力の改善を目的とした語彙習得プログラムの開発
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20K03012
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
赤尾 依子 関西学院大学, 文学部, 助手 (70756098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 あゆみ 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (10304221)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 読字困難 / 語彙 / 語彙力 / 漢字熟語 / 認知特性 / 特別支援教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,文字学習の中の「語彙」の定着について研究する。読字は文字学習の始まりである。文字学習は読字に始まり読解へと進んでゆく。文字学習は読解を経て,さらに,自らの思考を鍛え,表現する能力へとつながってゆく。文字学習において,読字困難児は読字の苦手さと,語彙の少なさを併せ持つ。この2つを併せ持つことによって,非読字困難児のような文字学習が困難となり,それが引き金となり学習不適応,ひいては学校不適応へとつながってゆく。 そこで,研究代表者らは読字困難児の文字学習を支援するために,通常学級で活用可能な読字困難児およびグレーゾーンの子ども達を対象とした「語彙習得プログラム」を提案しようと考えた。 「語彙習得プログラム」は,3つの段階を経て作成する。①各学年の新出漢字について「語彙力検査」を作成する。②「語彙力検査」を非読字困難児群と読字困難児群に実施し,読字困難児群の語彙力を明らかにする。③読字困難児群の認知特性を確認し,それを活用した語彙力を高める「語彙習得プログラム」を開発する。 令和2年度は,①について,小学1年生と2年生の「語彙力検査」の基となる漢字熟語の抽出を行った。漢字熟語の抽出には,小学校で使用されている「こくご」の教科書を使用した。③を行うために,WISC Ⅳを実施して読字困難児群と非読字困難児群の認知特性を比較した。その結果,読字困難児群は視覚情報処理において苦手さが少ないことが示唆された。そこで視覚情報処理を活用した2年生の指導教材の作成に着手した。具体的な作業としては,「こくご」の教科書より,単語を抽出し,その単語の意味,例文,画像等の作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・令和2年度は,小学1年生と2年生の「語彙力検査」に使用する漢字熟語の抽出を行った。漢字熟語の抽出を行ったことで小学1年生と2年生の「語彙力検査」においては意味の選択肢をつける段階に進むことができる。 ・令和3年度もCOVID-19の感染拡大が続いているため,作成した検査の信頼性と妥当性の検証を実施する時期が決定できない。令和3年度は小学1年生と2年生の「語彙力検査」を完成させ,信頼性と妥当性の検討を行いたいが,感染状況によっては実施できない可能性が考えられる。 ・「語彙習得プログラム」を作成するにあたって,読字困難児群の認知特性は解明したが,語彙力の低い子ども達の認知特性は未解明である。語彙力の低い子ども達の認知特性についても検討する必要があると考える。認知検査については既に終了しており,分析を行う段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
・小学1年生と2年生の「語彙力検査」を完成させるために,抽出された漢字熟語に意味の選択肢をつける作業を行う。 ・小学1年生と2年生の「語彙力検査」の信頼性と妥当性の検討を行う。 ・語彙力の低い子ども達の認知特性を検討する。 ・小学2年生の指導教材については,素材の確認を行い,音声をつけ,オンライン教材として令和3年度中に公開したい。
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Causes of Carryover |
令和2年度は,小学1年生と2年生の「語彙力検査」が完成していないため,それにかかる費用が計上できなかった。 令和3年度は,「語彙習得プログラム」の教材を完成させるために必要な液晶タブレットを購入する予定である。
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