2020 Fiscal Year Research-status Report
ADHD児童の中枢性疲労における行動・認知・分子基盤の解明
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20K03013
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
山本 隆宣 帝塚山大学, 心理学部, 客員研究員 (60191417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 雅俊 京都大学, 総合生存学館, 特定研究員 (50828928)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中枢性疲労 / 注意欠陥多動症(ADHD) / ADHD-RS-IV / 易疲労感 / AASS尺度 / 尿中モノアミン代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢性疲労(精神性疲労)は脳神経系を主体とする疲労現象であり、注意欠陥多動症(ADHD)の行動特徴との関連が指摘されている。本研究の目的は、児童期のADHDの中枢性疲労中枢性疲労について、行動と分子基盤との関係性から明らかにすることである。そのためにADHD児童と健常児童によって、行動特徴、認知機能、疲労物質の3つのレベルの指標がどのように異なるのかを小児型慢性疲労症候群国際診断基準尺度、ADHD-RS-IV,ワーキングメモリ、尿中の神経伝達物質やその前駆物質アミノ酸に関して調べ、これらの指標の相関関係を明らかにする。このことによりADHD児童の根本的理解と疲労しやすい病理的理解を把握した上で、教育的指導につなげるための基礎的、科学的知見を提供していく。そこでまずスタートとして、ADHDの行動特徴と中枢性疲労との関係についての検討に着手した。 ADHDは眠気や易疲労感を示すことに注目した。これはこれまでに我々の研究グループが独自に中枢性疲労の基礎的研究から推測してきたことである。導入段階として、大学生195名をAASS尺度から4種類のサブタイプ別に分類し、疲労尺度調査を実施した。混合群と不注意群の中枢性疲労度は多動や衝動及び対照群よりも有意に高かった。また、階層的重回帰分析により、不注意のみが中枢性疲労を予測していた。さらにADHD児童8名をADHD-RS-IVから4種類のサブタイプ別に分類後、尿中もモノアミン代謝物について解析した。すると不注意優勢型は他のサブタイプよりもMHPG(脳内ノルアドレナリン神経系活動度)が高く、HVA(脳内ドーパミン神経系活動度)は低かった。以上より、ADHDの不注意特徴と易疲労感の病理的な関係性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々がADHDの行動特徴として狙いを定めた点は、不注意行動に特徴があるに違いないという観点である。なぜなら、一般的に神経発達障害に分類される共通した行動特徴は多動と衝動の混合型であり、どの神経発達障害児でも問題とされている。一方、ADHDにおいては、不注意が全面的特徴として表出されるべきであると我々は考えている。この点を研究初年度に注目し、行動調査及び生化学的分析からそれを匂わす結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に入った今年度は、実験参加者をなるべく多く確保することである。次にADHD児童の認知機能をワーキングメモリ課題から把握する。一方、易疲労性の特徴の基盤に、健康、生活リズムや睡眠時間と質の問題を明らかにすべく調査や、疲労感、倦怠感の出現の有無についても調査する。日常生活の行動特徴の中に、ADHD特有の易疲労性につながる生活習慣があると予想している。これらの実験方法はADHDの行動特徴を捉え、認知機能との関連性が得られるものと思われる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのパンデミックにより、チェコで開催予定であった国際心理学会(ICP)の参加発表というスタイルが中止になり、現地へ行く機会がなくなりました。したがって、2020年度申請しておりました旅費等の配分、並びに国際会議への参加が繰り越されることとなりました。
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Research Products
(2 results)