2022 Fiscal Year Research-status Report
通常の学級でのインクルーシブ教育における互恵的学習に関する研究
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20K03018
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
司城 紀代美 宇都宮大学, 共同教育学部, 准教授 (30707823)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インクルーシブ教育 / 学級経営 / 互恵性 / ヴィゴツキー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,通常の学級におけるインクルーシブ教育の中で互恵的学習が成立する条件を,仮説生成的手法で明らかにすることを目的とするものである。これまで,異なる発達段階,異なる教科の授業について分析を行い,一見授業から外れるように思われる発言や教師が予期していなかった発言等が重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。 2022年度は,前年度に引き続き高学年の社会科授業の分析を行うとともに,小学校の1学級において継続的な観察と担任教師へのインタビューを実施した。 授業における子ども同士のかかわりは,ヴィゴツキーの「回り道」の理論に基づいて分析した。教室で見られるそれぞれの子どもの多様な表出は,多様な心理的道具の使用による思考の結果としてとらえられる。また,それは単に道具が置き換わることによる違いではなく,思考のプロセス全体の構造の違いであることが指摘できる。授業分析では,その構造全体,プロセス全体が授業に与える影響に着目した。分析結果より,通常の学級でインクルーシブな授業を実現し,そこに互恵的な学習を生じさせるためには,使用されるツールや支援方法に焦点化するのではなく,授業の全体構造が変化するプロセスに着目することが重要であることが明らかになった。また,学習が互恵的なものになるためには既存の場のあり方や秩序を変容させるプロセスが重要であると考えられ,そこには教師の学習観や子ども観,授業に対する構え等が影響を与えることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度途中に新型コロナウイルスの影響による学級閉鎖等があり,授業観察が年度の終わりまで続くこととなった。次年度,担任教師へのインタビューを実施し,教員のどのような意識や判断が授業に影響を与えるのかを明らかにすることが必要と考えられるため,「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延長して教師へのインタビューを行い,教師自身が意識的に行っていること、暗黙的に行っていることの中から互恵的な学習の成立条件をさらに詳細に検討していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響による学級閉鎖等により,授業観察によるデータ収集期間が年度末までとなったため,これらのデータを基にした教師へのインタビューを次年度に行い,その結果の研究発表を行う予定である。
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