2021 Fiscal Year Research-status Report
認知処理様式に基づいた文章理解・産出の指導―ICTを活用した学習過程の分析―
Project/Area Number |
20K03023
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
永田 真吾 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90784033)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発達障害 / 文章理解 / 文章産出 / 認知処理様式 / 認知特性 / ICT活用 / 学習過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常学級に在籍する読みに困難のある児童生徒を対象に,文字の読みに対するトレーニングと並行して文や文章理解の指導・支援を行なった。総じて,文字の読みの困難さに対しては音声読み上げ機能といった支援技術を活用することでその困難さを軽減することはできるものの,文や文章理解の困難さ自体は軽減されることはなかった。また,同じ機能を持つツールでも,音声再生のための操作や読み上げている最中の表示方法,解答方法など,インターフェースによっては文章理解を促進し得ない場合もあることが示された。支援技術のフィッティングを踏まえた上で,読みに困難さのある子どもの認知特性に応じた教材を作成することが重要であった。文字の読みに困難があり文理解にもつまずきがある,結晶性能力と流動性推理が高く長期記憶と検索能力が低い小学生に対しては,タブレット画面に表示された本文中の単語全てをタッチ操作で直接移動できるようにし,文構造(統語構造)を把握しながら学習を進めることで一文及び文章全体の理解が促進されることが示唆された。文章理解が困難な,視覚処理と流動性推理が高く結晶性能力が低い中学生に対しては,アセスメントの結果から接続語の理解および指示語の理解に困難を示しており,各々の詞を直接指導してもその理解は促進されなかった。そこで,読み取る対象となる文章を,文同士の関係性や文章構造をグラフィックオーガナイザーを用いて視覚的に表現し,文間論理関係を推測することで接続語や指示語の理解もある程度可能となった。また,作文において書く内容をグラフィックオーガナイザーを用いて組み立てること,接続語や指示語を意識して使用することでも理解が促進することが示唆された。両対象児とも,単語や文をタッチ操作等で擬似的に移動・操作することが理解の助けとなることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響・制限が少なからずあり,教育現場におけるデータ収集は昨年度に引き続き困難な状況であったことから開始が遅れた。しかし,対面実施における感染症対策の徹底及びオンライン形式での研究実施が円滑に進めることがか可能となった。そのため,研究参加者の確保および継続的な実施について順調に進んでいる状況から,「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
発達障害児一人ひとりの認知処理様式とそれに応じた支援法は異なるが,その共通項は何なのか,各事例の認知処理様式に基づいた文章理解・産出過程及び支援方法について整理していくことが重要となる。研究参加者のICT活用スキルやツールの種類をも含めた認知処理様式に応じた教材や,対面形式まはたオンライン形式での支援法について検討を進めることとする。特に,テキストの操作や他者との会話といった,ツールおよび他者とのインタラクションとその認知処理スタイルに着目して分析を進めていく。
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