2020 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ教育場面における知的障害児の学習効果と自己評価
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20K03039
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 道生 筑波大学, 人間系, 准教授 (50362827)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インクルーシブ / 知的障害児 / 自己評価 / 交流及び共同学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、コロナ渦で緊急事態宣言も発令がされたことなどから、コロナ渦以前の当初計画からは、大きな変更が生じた。具体的には、対面での交流及び共同学習の実践や面接調査が実施できなかった。 こうした状況の変化があったが、計画を変更して新たにオンラインでの交流及び共同学習の実践が行われ、その実践に基づき研究を進めた。具体的には、知的障害特別支援学校中学部の生徒と高等学校の生徒を対象としてオンラインによる交流及び共同学習が取り組まれ、その効果等について生徒自身の自己評価から検証した。その結果、知的障害のある中学生は、オンラインでの交流でも一定の満足度はあるものの全員が楽しめた状況ではなかったこと、自分のやりたかったことが6割程度の生徒はできたと思っているものの、残りの生徒はできなかったと実感するなど、オンライン交流での難しさについても一部の生徒は実感をしていた。その一方、障害のない高校生は、オンラインでの交流及び共同学習のコミュニケーションの限界について実感しつつも、困難さはほとんど感じていなかったことなど明らかとなった。そして、障害の有無に関係なく、オンライン交流をした後には、やはり実際に対面で会いたくなったことなども示された。知的障害のある生徒も障害のない生徒も、オンラインでの交流について楽しみつつも、対面とは異なる不便さを認識しており、その実感の程度には個人差も存在していることが示唆された。本研究の研究成果については、コロナ渦におけるオンラインでの交流及び共同学習の新たな試みとして、学術雑誌に投稿予定である。また、交流及び共同学習の研究において、これまで明らかにされてこなかった知的障害のある生徒の自己評価などを明らかにできたことは、新たな知見を見出したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ渦であり、また緊急事態宣言も発令されたことより、当初計画していた特別支援学級での交流及び共同学習の実践的な研究、対面での特別支援学校における交流及び共同学習の実践研究については、感染予防などの観点から、実施困難であった。また、全国規模のアンケート調査についても、コロナ渦での交流及び共同学習について、交流及び共同学習の実施すら困難な学校が多いことが予想できたため、調査内容の変更も必要となり検討中であり、実施できていない。 ただし、コロナ禍における新たな取り組みとして、対面ではなく、オンラインでの特別支援学校と中学校の交流及び共同学習の実践が試みられ、そこで生徒自身の自己評価などについて検討した。そして、障害のない生徒との比較を通して、新たな知見を示すことができた点は、一定の成果が得られたと考えられる。 現在の新型コロナウイルスを巡る状況から推測すると、学校内において対面での面接調査の依頼を行うことは困難となっている。そのため、実施方法の一部変更についても検討している。具体的には、対面での支援や面接方法ではなく、オンラインでの実施など、「対面なし」で進めることを考えている。また、全国の知的障害特別支援学校を対象としたアンケート調査については、コロナ渦における交流及び共同学習の実践について、当初の予定から一部調査内容を変更したうえで、次年度の実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、まず2年目にあたる今年度も、コロナ渦のため、対面での面接調査や教育現場での実践的な研究への参加は難しい面があると予想される。そのため、面接法からアンケート調査やオンラインの面接調査といったように方法論を変更して対応していきたいと考えている。また、昨年度から取り組まれているオンラインでの交流及び共同学習が実践された場合には、引き続き本年度も学校教育現場との連携を取りながら、生徒の学習効果や自己評価などについて検証を行っていく予定である。 さらに、全国の知的障害特別支援学校を対象とした交流及び共同学習に関する調査研究を計画している。コロナ渦における調査になるため、一部内容は変更するが、交流及び共同学習の現状と課題を明らかにしつつ、生徒の自己評価を高める交流及び共同学習の実践方法について探求していきたい。 また、保護者を対象としたアンケート調査により、知的障害のある児童生徒の自己評価、自己理解などと交流及び共同学習の現状との関係などについても、明らかにしていきたいと考えている。くわえて、オンラインによる本人との面接調査なども計画している。 対面による研究が実施困難であるため、保護者、本人に対してもオンラインなどを活用していく。 そして、本年度はオンラインが多いと思われるが学会にも参加し、研究成果の発表を行うとともに、学術論文の投稿に取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの拡大、緊急事態宣言などもあり、予定していた対面による実践や面接調査が実施できなかった。また、アンケート調査においても、本年度はコロナ渦の影響を受けて交流及び共同学習がどのように実施されているかという実態把握から行う必要があると考え、調査内容を再検討したこともあり、調査そのものを次年度へと変更した。 さらには、学会などにおいても、対面ではなくオンライン開催となったため、学会参加にかかわる旅費なども使用することがなかった。そのため、予算についても、次年度使用額が生じた。 次年度についても、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、対面などによる研究や実践が難しくなると予想される。そのため、対面による実践と面接は状況によって、オンラインへと変える。また、調査研究についても、郵送方式ではなく、一部はweb調査へと変更する。このように、できる限り感染予防を行った方法へ研究の一部内容を変換する。なお、旅費、郵送費などはオンラインの面接やweb調査へと変更することによって、新たに生じる謝金、web調査の経費などへと変更予定である。
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Research Products
(1 results)