2021 Fiscal Year Research-status Report
訪問教育における医療的ケア児の実態と教育支援の課題に関する研究
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20K03044
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
菊池 紀彦 三重大学, 教育学部, 教授 (20442676)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 医療的ケア児 / 訪問教育 / ICT / 同時双方型の授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本研究の3つの目的のうち、「2. 訪問教育の医療的ケア児を対象に、1)対象児に対する教育実践中における脳血流動態と心拍数変動が対象の微細な行動表出とどのように関連しているかを 明らかにするとともに、働きかけに対する応答が乏しい医療的ケア児に対する教育支援の方略を検討すること、2)訪問教育の担任教師と連携して、ICTなどの機器を用いた効果的な遠隔教育の在り方について明らかにする。」ことについての取組を行った。 対象は、特別支援学校高等部のA児で、人工呼吸器装着、経管栄養等を必要とする超重症児である。A児宅を担任教員とともに訪問し、A児宅とB特別支援学校とをGoogle Classroomを用いて繋ぎ、タブレットPCを通して生徒同士の合同学習の場を設定した。 同時双方向型の合同学習は、季節感を取り入れた内容で展開された。例えば、5月であれば新茶を取り入れた活動、7月であれば七夕を取り入れた活動であった。同時双方型の授業が始まる前は、顔面の清拭などのケアが行われており、その間のA児のHR変動は安定していた。B特別支援学校の教室と繋がり、生徒の声が聞こえてくると、顔面の紅潮や眼振が大きくなるなどの行動上の変化及びHR変動が認められた。持続的心拍数変動(HRV)を測定すると、同時双方型の授業が始まる前と後では、授業が始まってからのHRV値の方が有意に高かった。また、瞬時心拍を測定すると、減速から加速への二方向への変化が認められた。 同時双方型の授業の実施により、医療的ケアが濃厚な超重症児A児における行動変化、すなわち、覚醒水準の上昇や、時に期待反応を示すことが認められた。この変化は、担任教員がA児と教室の生徒を媒介したことによるものと考えられた。継続して関わりを行うとともに、教室の生徒からの働きかけるによる行動変化についても検証を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染症により、定期的に対象児童の自宅を訪問することが困難であった。そのため、事例的な取組についてはやや遅れている状況にある。2021年度は、高等部、中学部に在籍する生徒を対象とした取組を実施したものの、訪問回数が限られた。2022年度は訪問回数を増やし、取組を充実させるとともにデータを蓄積したい。
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Strategy for Future Research Activity |
事例的な取組については、コロナウイルス感染症の拡大に細心の注意を払いながら、対象児童の自宅を継続して訪問する。2022年度については、小学部の児童も対象に取組を行う予定である。得られたデータをもとに、 対象児童の行動表出について分析・整理する。また、本校に通学する児童の様子についても教師から聞き取りを行う。これらのデータを整理しつつ、オンライン 授業を展開し、子どもたち同士の学び合い、育ち合いについて検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の拡大により、対象児宅を訪問する回数が制限され、それに伴う消耗品費等の支出が少なかった。また、学会がオンライン形式となったため、旅費が発生しなかった。さらに、調査を実施することが出来なかったため、その費用を繰り越した。2022年度は、対象児宅への訪問回数が増加すること、学会の対面開催があること、調査を実施するため、必要経費を執行する予定である。
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Research Products
(3 results)