2023 Fiscal Year Research-status Report
訪問教育における医療的ケア児の実態と教育支援の課題に関する研究
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20K03044
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
菊池 紀彦 三重大学, 教育学部, 教授 (20442676)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 医療的ケア児 / 超重度障害児 / 訪問教育 / オンライン授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は2点の取組を実施した。まず、医療的ケア児を担当している教員に対し、教育上での課題についてインタビュー調査を実施した。調査から、①医療的ケア児と関わる際に関する不安、②子ども理解に関する専門職と認識のずれ、③付き添いの状況、④医療的ケア児の受け入れについて、の4点が抽出された。①については、医療的ケア児に関する知識や経験の有無が教員の不安感に大きな影響を与えていた。②については、教員と看護師の連携・協働における役割の不明確さが背景要因として認められた。③については、保護者の付き添いの短時間化が保護者の負担感を減らしている一方で、教員の不安・負担を大きくしていた。④については、医療的ケア児を安心・安全に受け入れるための基礎的環境整備が十分でないことが明らかとなった。これら定性的データを基に、来年度は定量的な調査を行う予定である。 次に、昨年度かかわりを持った2名の超重症児について、訪問教育の様子を録画したデータ及び生理心理学的反応のデータ分析を行った。2名の超重症児とも、働きかけに対する応答はほとんど認められていない。担任教師は、各種感覚系を意識しながら、感覚別の働きかけ、感覚を統合した働きかけを行っていた。また、通学生とオンラインでつなぎ、同時双方向の授業を展開した。2名の超重症児とも、イベントリレーテッドな生理心理学的応答が認められた。イベントリレーテッドな反応が認められたのは、感覚を統合した働きかけの時であり、皮膚感覚、深部感覚、前庭覚の複合刺激に対し、HR及びHRVの上昇が認められた。一方、通学生とのオンライン授業では、イベントリレーテッドの反応頻度は少なかった。同時双方向の授業において、直接的情動的な働きかけが、対象児童の覚醒水準を上昇させる一方、感覚の活用が主に視覚や聴覚に限られるオンライン授業は、感覚刺激の活用の在り方に課題があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2名の対象児についてのデータ解析は、概ね順調に推移している。しかしながら、本研究の目的の1つである「医療的ケア児の感覚機能、認知機能の把握状況や教育支援の状況に関する全国調査」が未実施である。
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Strategy for Future Research Activity |
訪問教育の実際に関する2事例のデータ解析については、概ね順調に推移している。引き続き、データを丁寧に検証しながら、訪問教育時における教育支援の在り方について検討を行っていきたい。全国調査については、定性データを丁寧に確認しつつ、項目の精選を行った上で、2024年度に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症が終息しつつあったものの、医療的ケアがあるゆえに、対象児童生徒宅を訪問する回数が制限された。それに伴う消耗品の支出が少なかった。また、学会がオンライン形式であったため、旅費が発生しなかった。次年度の学会は対面形式での実施であるため、旅費を執行する。また、全国調査を行うため、その費用についても執行する予定である。
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