2020 Fiscal Year Research-status Report
思春期後期~青年期前期のきょうだいとその家族のためのQOL支援プログラムの開発
Project/Area Number |
20K03050
|
Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
阿部 美穂子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (70515907)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 障害児者のきょうだい / きょうだい支援 / 障害児家族QOL / 障害児家族支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は本研究の対象となる思春期後期から青年期前期(以下、対象時期)のきょうだいの心理的課題について、2007年以降の文献14点を検討し、以下の知見を得た。 まず、家族内役割における葛藤が顕著となることである。きょうだいには子ども役割と家族メンバーを世話する役割(親役割)があり、幼少期から親役割を多く担うとともに、特徴的な子役割が青年期の過剰適応に影響すると指摘されている(清水ら,2021)。きょうだい自身の手記や語りから、対象時期になるとこの役割期待に対する意識が顕著となり、そのきょうだいならでは家族内役割を自身がどのように理解し、対応したらよいか葛藤する姿が報告されている(中澤,2019;近藤ら,2015;原田ら,2012;他)。 次に、同胞の障害理解における葛藤が顕著となることである。対象時期に障害のある兄弟姉妹(以下、同胞)に対する家族メンバーとしての障害観に、社会一般にとらえられている障害者観が取り込まれ、「独自の障害者観」(春野ら、2011)が形成される。それは、両義的なものであり(沖潮、2016)、きょうだいが同胞との生活から離れる「距離感をもつ」体験等を通して、同胞の障害の受け入れと新しい同胞との関係形成に至る場合もある(越智ら,2017)。 さらに、自らの自立的な生き方の模索における葛藤である。対象時期はきょうだいが自身の進路選択に直面する時期でもあり、自分自身の自由な生き方と、障害児者の家族として、同胞を中心に据えた生き方の双方について、どのように自分の中で統合し、進路を決定するかという葛藤に直面する(石原ら;2019; 沖潮,2016; 笠田、2014;他)。 以上に併せ、対象時期にあるきょうだいに必要な支援として、苦悩を表出できる場や相手、自身の「強み」への気づき、自己を発揮できる場の模索等が必要であることも示唆された(藤原ら、2011;他)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、当初、研究協力機関に依頼し、研究対象となるきょうだいに対し、アンケートによるニーズ調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、特別支援学校その他の教育機関、及び福祉施設等での調査が困難であったことから、この調査は取りやめとし、各機関及び対象者に負担のない方法を検討し直し、次年度以降に先送りすることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みながら、当初予定していた研究対象となるきょうだいのニーズ調査の実施と、実践プログラム開発に向けた素案作成に取り組む予定である。しかし、状況が好転しない場合は、ニーズ調査及び、支援プログラムをオンライン化する方向で再検討し、オンラインコンテンツとして、新しい形態のプログラム開発に変更することも検討している。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、当初、予定していた研究協力機関への調査、及び、情報収集等のための出張等が実施不可能となったため、そのためにの予定使用額が未使用となった。これらについては、そのまま次年度の計画に組み込み、予定通り、調査及び実践研究に使用する予定である。さらに、次年度も対面実施が困難となった場合には、オンラインでの調査及び実践研究に切り替え、ウェブカメラ等、実施に必要な機器の購入に充てることを検討している。
|