2022 Fiscal Year Research-status Report
思春期後期~青年期前期のきょうだいとその家族のためのQOL支援プログラムの開発
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20K03050
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
阿部 美穂子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (70515907)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 障害児者のきょうだい / きょうだい支援 / 障害児家族QOL / 障害児家族支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、思春期後期~青年期前期のきょうだい(以下、きょうだい)に対し、「日本版 FQOL Scale(家族QOL尺度)25項目」(小林・阿部・藤井,2016)のオンライン匿名調査を行い、収集されたデータ146名分(兄25%、姉60%、弟10%、妹4%、年齢中央値19歳:13~23歳)について、量的検討を実施した。 検討の結果、きょうだいが回答したFQOL(以下、きょうだいFQOL)には、先行研究(阿部, 2021)におけるきょうだい児を育てる親が回答したFQOL(以下、親FQOL)と同様の「家族内環境要因」と「家族外環境要因」の2因子構造が見い出された。しかし、親FQOLで「家族内環境要因」に含まれた「生活の浮き沈み」「子どもの自立」「子どもの生活にかかわる友達や先生などに関する知識」項目は、きょうだいFQOLでは「家族外環境要因」に含まれた。 また、きょうだいFQOL平均値は、「家族に関する悩み有」群が「同悩み無」群より有意に低く、出生順、同胞の障害種別比較では、有意な差は見られなかった。 一方、「きょうだいFQOL」と「親FQOL」比較では、きょうだいFQOLが親FQOLより有意に高かった。しかし、きょうだいの家族に関する悩みの有無と親のきょうだい児育てに関する悩みの有無の「悩み有・無」要因と併せて検討したところ、きょうだい、親の「悩み有」群FQOL値が、「悩み無」群よりも有意に低くなり、「悩み有」群では、きょうだいと親の群間有意差はなかった。加えて、きょうだい、親群のいずれにおいても「家族内環境要因」のFQOL値が、「家族外環境要因(共通)」よりも有意に低くなった。 以上のことから、きょうだいと親が、双方の家族QOL観を理解し合う必要性、家族に関連した悩みを抱えるきょうだいに対し、親と同様に、家族内環境要因面からQOL向上支援に取り組む必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年に計画していたアンケート調査回答者のリクルートができず、次年度送りになったことから、計画全体が1年間遅れている状況である。2021年度以降は、アンケート調査方法をオンラインに切り替えたことで、研究協力者のサポートにより、匿名性を保持しながら、回答を得ることが可能となり、調査実施を実現することができ、順に1年遅れで研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査で得られたデータの分析を終了することができたので、引き続き、分析結果から示された支援ニーズに基づき、思春期後期から青年期前期に該当する、障害児者のきょうだいとその家族に対する支援プログラムの素案を作成する。併せて、研究開始当初に研究協力を得られている各機関に改めて協力の可否を確認し、協力可となった場合は、プログラムへの参加希望者を募って、実践研究を実施する。
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Causes of Carryover |
研究計画が1年ずつ遅れていることから、当初2022年度中に取り組む予定であった、支援プログラム開発研究のための情報・資料収集、開発したプログラムの実践研究による検証、及びその成果発表等にかかる費用が、そのまま未使用となっている。未使用額については、今後、研究協力者と検討しながら、対面、オンライン実施の両方での実施方法を想定しつつ、上記の研究推進の費用に充てる予定である。
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