2020 Fiscal Year Research-status Report
改善した成人の語りを吃音児の早期改善に活用するPDCA環境調整プログラムの開発
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20K03053
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
池田 泰子 目白大学, 保健医療学部, 専任講師 (90387514)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 吃音 / 改善要因 / 環境調整法 |
Outline of Annual Research Achievements |
吃音訓練改善過程において変化する考え・感情・行動等が改善方向に向かっているかを経時的に把握することを目的に作成した「吃音者の考え・行動把握シート(仮)」を中学生以上の吃音児者を対象に実施し、吃音の改善要因を検討した。「吃音者の考え・行動把握シート(仮)」は38項目から構成されており、「とても当てはまる」~「まったく当てはまらない」の5件法で回答を求めた。「吃音症状が重いと思う」の項目が軽減した17名を対象として、その他の項目について初回記入時と軽減した時点の2時点を比較したところ、「自分の感情(悲しさ、嬉しさなど)を素直に出してよいと思う」「自分の意思(思い・考え)を素直に出してよいと思う」「自分の感情をありのまま出している」が高まっており、吃音症状の軽減には、生活の中で自分の感情や意思を出すことに関する考えや行動が関係していることを明らかにした。 幼児から小学生の吃音児を対象に実施している環境調整法によって、改善またはほぼ改善している保護者数名にインタビュー調査の許可を得ることができた。「子どもの自発性を増やすために保護者の関わり方を変える」→「子どもの感情表出が増える」→「子どもの積極的な言動が増える」→「吃音症状が軽減する」という軸は共通であるが、保護者が関わり方を変えるまでのプロセスとそれを維持するため工夫がそれぞれで異なっており、2021年度にその点についてのインタビューを通して明らかにする。 吃音臨床を始めた言語聴覚士5名に対して複数回スーパーバイズを行い、そのやりとりを通して臨床を行う上で迷うこと、改善したエピソード等、効果的な臨床を行うための情報収集を行った。子どもへの関わり方を変えることを提案する環境調整法では、「変えたいと思っているけれど変えられない保護者に対してどう助言するか」「関わり方を変えてもすぐに成果が出ないことが不安」等が挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、吃音児の症状が悪化・改善する要因を把握するためのチェック票(「吃音の状態を把握するチェック票」「保護者の子どもへの関わり方を把握するチェック票」)の作成、事例集の準備を行う予定であった。成人吃音者の改善要因分析と研究協力者である言語聴覚士からの情報収集は行うことができたが、改善した吃音児の保護者と改善した成人吃音者を対象に行うインタビュー調査を実施することができなかった。コロナ蔓延により吃音児者が吃音訓練を自粛する時期があり、予測していた改善時期が延びてしまったことによるが、現時点では数名の保護者にインタビュー調査協力の内諾が得られているため、調査実施後に訓練効果の有無を把握するためのチェック票(①子どもの主体的な行動と発話を把握するチェック票、②子どもの吃音症状に関するチェック票、③子どもの主体駅な行動と発話を把握するチェック票)を作成する。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、改善した吃音児の保護者数名にインタビュー調査協力の内諾を得ており、その調査結果を用いて、訓練効果の有無を把握するためのチェック票を3種類(①子どもの主体的な行動と発話を把握するチェック票、②子どもの吃音症状に関するチェック票、③子どもの主体駅な行動と発話を把握するチェック票)作成する。また、事例集の事例の部分を作成する。 2022年度は、事例集を完成させる。訓練によって改善した成人の吃音者にインタビューを行い、そこで得られた早期改善に役立つ情報と事例集の概論部分を作成する。また、チェック票で得られた結果をどのように解釈し、活用するか等、チェック票活用のためのマニュアルを作成する。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言が発出されたことにより、研究協力者との打ち合わせをzoomで行ったこと、また、吃音訓練を行っていた吃音児者の改善が予定していたよりも遅れたことで、吃音児者を対象としたインタビュー調査を実施できなかったことにより、チェック票や事例集を完成させることができなかったため、次年度使用額が生じた。 2021年度は、内諾が得られている吃音が改善した子どもの保護者数名を対象としたインタビュー調査を実施し、当初予定していた「子どもの主体的な行動と発話を把握するチェック票」とともに、「吃音の悪化状態を把握するチェック票」「保護者の子どもへの関わり方を把握するチェック票」を作成するため、インタビュー協力謝金やインタビュー内容をビデオ起こしするための人件費として使用する。また、事例集の事例の部分を作成するため、イラストや校正等の謝金に使用する。
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