2022 Fiscal Year Research-status Report
改善した成人の語りを吃音児の早期改善に活用するPDCA環境調整プログラムの開発
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20K03053
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
池田 泰子 東京工科大学, 医療保健学部, 准教授 (90387514)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 吃音 / 環境調整法 / インタビュー調査 / チェック票 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.吃音が改善した成人1事例(30代)について、2年3ヵ月間における訓練ローデータを分析し、改善に関わる要因を検証した。「考え・行動に関する調査票」は、症状の自己評価、会話場面の主体性、自身の発話への注目、工夫・回避の有無等、吃音の改善・悪化に関わる38項目で構成されており、5件法で回答を求める調査票であり、月1回の面談時に実施した。今回は、調査票の項目「吃音症状が重いと思う(自身の症状を評価する主観的視点)」を軸として回答の推移と他の項目との関係について分析を行った。初回時の吃音進展段階は第4層であったが、3層、2層と改善し、2年3ヵ月後には「全く気にならなくなった」とのことで訓練を終了した(面談回数:19回)。①症状の自己評価:「吃音症状が重いと思う」項目は、初回は「どちらともいえない」、6ヵ月後に「あまり当てはまらない」、11ヵ月後に「全くあてはまらない」と推移した。②「吃音症状が重いと思う」項目と他の項目との関係(Spearman rank correlation):特に相関が強い項目(rs)は、「話すことに精一杯で周囲の様子に注意が向かない(0.96)」「生活の中でやりたいことが吃音のせいで思うようにできない(0.96)」「話す時にいつも意図することばを出そうとしている (0.90)」「話す時に心臓がドキドキする(0.90)」であり、症状の軽減(自己評価)と発話への注目、話し方の工夫、話す場面の否定的な感情の軽減に関係が認められた。 2.子どもを対象とした訓練法「環境調整法」に用いるチェック票(3種)を作成することを目的としていたが、チェックした項目から得られる情報をより支援に活かしやすくするために分析例を提示した方が良いと判断し、検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症が拡大する時期もあり、複数人で臨床現場を訪問して行う訓練ローデータの入力作業が滞り、予定よりも時間を要したため。また、子どもを対象とした訓練法「環境調整法」において用いるチェック票(3種)を作成するだけではなく、チェックした項目から得られる情報をより支援に活かしやすくするために分析例を提示した方が良いと判断したことで、作業が追加されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1.環境調整法において用いるチェック票(3種)をトライアルで臨床現場で使用し、最終調整を行う。 2.訓練によって吃音が改善した吃音児の保護者を対象としたインタビュー調査から得られた知見を学会において発表を行う。 3.訓練によって吃音が改善した成人から得られた知見と訓練によって吃音が改善した吃音児の保護者を対象としたインタビュー調査から得られた知見をもとに、事例集を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナの感染が拡大した時期もあり、アルバイトを含めた複数人で臨床現場を訪問し、データ収集およびデータ入力を行うことが困難であったため。また、研究の進捗がやや遅れていることにより事例集の作成を行うことができなかったためである。 次年度の使用計画は次の通りである。1.訓練データの収集と入力に関する旅費・謝金:10万円、2.研究成果の発表に関する参加費・旅費・論文投稿費(第32回国際音声言語医学会:ニュージーランド、国内関連学会):85万円、3.子どもの吃音を改善に導くための事例集の作成費:90万円、4.収集データ保存・分析に関する機器:20万円、5.研究協力者との打ち合わせ費用:10万、6.消耗品費:5万円
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