2022 Fiscal Year Annual Research Report
通常学校で学ぶ聴覚障害児の語音聴取の機序と無線補聴システムの要件に関する研究
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20K03054
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
大原 重洋 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (90758260)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 無線補聴システム / 語音明瞭度 / 補聴器 / 難聴 / 雑音負荷語音明瞭度 / LTASS / マルチトーカネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、無線補聴システムの効果に関するインタビュー調査を行い、これまで得られた測定結果に質的な評価を加えた。 通常学校に通う児童・生徒4名(良聴耳聴力レベル50ー82dB)と担任教師3名を対象とし、半構造化面接を行った。逐語録について、計量テキスト分析(樋口, 2014)を用いて形態素解析を行い、意味の共通する語彙を同一グルーピング(コード化)し、対応分析により、各カテゴリにおける概念を生成した。 結果は、総異なり語数562語の内、最小出現数5回以上の78語を対応分析に使用し、成分1は固有値0.2、寄与率68%、成分2は固有値0.1、寄与率31%であった。原点(0,0)から離れて、3つのカテゴリーが布置される方向に、共通する特徴を有する語彙の布置を認めた(効果28語、取り組み14語、課題17語、その他19語)。 抽出された概念は、①効果「設定をしなくても、教師が首から掛けたり、班での話し合いで机の上に置くだけで聞き取れる」、②取り組み「機器の受け渡し等の教室内のルールを定めたり、ミュート等の機器操作に習熟することで、聞きやすさが向上する」、③課題「複数の子どもが一斉に発言する授業場面では、対応できない。1台の機器の受け渡しは、時間がかかるため、実用性に乏しい」であった。今後、マルチトーカネットワークの構築の必要性が示唆された。 さらに、良聴耳聴力レベル40dB以上の11名を対象に、無線補聴システムに接続する補聴器の音圧と実際の語音明瞭度の関係について調査した。測定の結果、聴覚障害児が80%以上の語音明瞭度を得るためには、250ー4000Hzの閾値上のLTASS(長時間平均音声スペクトル)について、16±7.6dBSPL増幅させる必要があることを明らかにした。無線補聴システム使用時においても、良好な語音明瞭度を得るためには、同程度の音圧増幅の必要性が示唆された。
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