2020 Fiscal Year Research-status Report
吃音のある子どものレジリエンスの向上を目指した対話型教育実践プログラムの構築
Project/Area Number |
20K03061
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
牧野 泰美 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 研修事業部, 上席総括研究員 (80249945)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 吃音 / レジリエンス / 対話 / ことばの教室 / 言語障害教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、吃音のある子どものレジリエンスを高める教育実践の観点の一つである「対話」に焦点を当て、有効な対話の実践の在り方、実践内容・方法等を検討・開発し、教育実践の現場に提供することを目指している。 研究初年度である本年度は、主に文献及び資料の収集・検討、ことばの教室からの情報提供をもとに、教育実践における対話に関する理論の整理、吃音のある子どもとの対話型実践の収集・整理を行った。 対話型実践の基盤となる考え方として、オープンダイアローグの基礎である、すべての参加者の発言が対等に尊重され、かつ、当事者の主体性が保たれる「対等性」、どんな発言にも速やかに応答し対話を進める「応答性」、対話の進み方や結論が予測できない曖昧な状況に耐える「不確実性への耐性」等の重要性や、ナラティブアプローチの基本的な技法である自分と自分が抱えている問題を切り離す「外在化」の有用性が整理された。 ことばの教室における対話型実践の具体としては、①吃音に関するチェックリストをもとに各項目について子どもと教師が語り合う実践、②自分の吃音の状態、吃音に対する自分の気持ち、さらには周囲の人の態度について考え、語り合う実践、③吃音の人が登場する絵本、物語をもとに語り合う実践、④すごろく等のゲームにおいて吃音について語ることを取り入れる実践、⑤吃音に関する第三者の悩み事について考え合い、語り合う実践、⑥日常生活における吃音で困る場面などについて語り合う実践、⑦吃音を擬人化し(動物や架空の生き物にたとえ)、その性格などを語り合う実践、等を収集・整理することができた。 今後、対話型実践に関する理論的枠組みの整理とともに、ことばの教室担当教師や吃音当事者団体等からの情報収集・調査、ことばの教室における実践研究を行い、対話型実践に不可欠な事項、留意点、具体的な対話の主題や材料、対話の進め方等の考察へと展開させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、予定していた、文献(書籍、論文、実践発表・報告等)、各種資料等からの教育における対話型実践にかかわる理論の収集・整理、吃音のある子どものレジリエンスに関する知見の収集・整理、ことばの教室における吃音のある子どもとの対話型実践にかかわる実践例の収集・整理については、ある程度進めることができた。 しかし、当初計画していた、ことばの教室担当教師や吃音当事者団体への調査については、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点、コロナ禍において様々な対応に追われている学校現場への配慮から自粛した。このことにより、現時点では、各地のことばの教室からの情報や、実践資料をもとにした整理にとどまっていることから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、対話型実践に関する理論的枠組みの整理、ことばの教室担当教師や吃音当事者団体等からの情報収集・調査、ことばの教室における実践研究を行う予定であるが、これまでの研究活動において連携体制を構築してきた、ことばの教室の担当教師によって組織されている研究団体、吃音当事者団体との連絡調整や、研究協力者との連携を密に行うことで、研究活動の推進を図る計画である。
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Causes of Carryover |
本年度は、①新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、資料収集や打合せ等のための訪問は実施せず、電子メールや電話、必要に応じてオンラインによる情報収集を行ったことから、旅費を使用しなかったこと、②同様に感染拡大防止の観点及びコロナ禍における様々な対応に追われる学校現場への配慮から調査を自粛したことで、印刷及び郵送等にかかる経費を使用しなかったこと、③本年度の資料の整理は研究代表者のみで行ったことから資料整理にかかる人件費・謝金を使用しなかったこと、等により次年度使用額が生じることとなった。 次年度は、訪問による聞き取り、収集資料の整理・分析、研究協力者との協議等を実施する予定であり、計画通りの使用を見込んでいる。
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Research Products
(1 results)