2020 Fiscal Year Research-status Report
プラスチックを対象にしたものづくり教育教材の開発と授業への展開
Project/Area Number |
20K03087
|
Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
尾崎 純一 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70245976)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 工学教育 / プラスチック / 射出成形 / PBL / 設計製図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,非常に身近なものとなったプラスチック材料を工学教育の内容の一つとして取り入れるための教材開発および授業への展開を目的とし,小型卓上射出成形機および簡易型の開発ならびに設計製図,PBL授業への導入を試みる. 今年度は,まず以前製作した既存の卓上射出成形機の改良から行った.卓上射出成形機をより扱いやすく可搬性の高い教材とするため,基本構造から見直しを行い材料を充填しやすくしたり,てこの原理を用いて小さな荷重の負荷でも高い射出圧力が得られるようにしたりするなど,いくつもの改良を施した.その結果,これまでよりも扱いやすい卓上射出成形機を製作することができ,安定した成形品を得られることが可能となった.しかし,扱いやすくなった代わりに構造が複雑になった部分もあり,成形機の軽量化を図ることができなかったことから,次年度は構成材料を工夫するなどして,さらに改良を加えることにしている. 授業への展開では,1年設計製図の授業において,等角図による立体図の作図演習としてキーホルダーの作図を取り入れた.しかしながら,コロナウィルス感染拡大の影響により,約2か月もの間オンラインで授業を実施しなければならなくなるなど今年度は予期しない状況となったため,プラスチックに関するものづくり教育としての取り組みが十分とは言えなかった.次年度は,設計製図授業で作図した作品から,3D CAD,3Dプリンタを活用して簡易型の製作にまで展開を試みる予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目はコロナ感染拡大のため当初の予定を変更し,まず既存の卓上射出成形機をさらに使いやすいものにするため,基本構造を見直して新たに設計製作を行った.既存の射出成形機は,荷重負荷時に荷重点と重心のバランスが悪く装置が傾きやすい不具合があること,また,必要な射出圧力を得るためにかなりの力を要するなどの問題点があったため,これらの問題点を解消するため,てこの原理を用いた構造に設計変更し,新たに成形機を製作した.新たに製作した射出成形機は,射出容量は既存成形機と同様であるが,レバーに負荷する力は,既存成形機よりも大きく軽減することができた.これにより,射出圧力を大きくできることから,成形時の不良が大幅に減少したことが確認できた.しかし,樹脂の投入口の工夫などで構造が若干複雑になったことにより成形機の重量を減らすことができなかったため,2年目の課題となっている. 授業への展開としては,1年設計製図Iの授業において,等角図による立体図の作図演習としてキーホルダーの作図を取り入れた.当初の予定では射出成形を体験してから,作図に入る予定であったが,コロナ感染拡大のため,2ヶ月の間遠隔授業を余儀なくされたため,遠隔授業の中で課題として取り組ませる形となった.具体的な課題として,本校のPRになるようなキーホルダーの立案とし,サイズは60×30×10mmに収まるものとした. 射出成形機の製作をテーマにした実習を行う予定である創造設計製作の授業計画の立案であるが,コロナ感染拡大の影響で次年度においても授業が通常の形態で実施できるかどうか分からない状況にある.このため,2年目の授業では試行の形で取り入れることとし,コロナ感染拡大の影響が少なくなると思われる後期のテーマとして授業計画を立案した.
|
Strategy for Future Research Activity |
1年設計製図の授業では,昨年度に続きキーホルダーの立体図作図課題として授業に取り入れる予定である.昨年度は本研究に関する取り組みは作図課題のみであったが,この授業ではものづくりの基礎も教育目標の一つとしていることから,プラスチック材料の基礎知識についても解説する時間を設け,その上で製作した射出成形機を用いて一人一人射出成形を体験させ,プラスチックによるものづくりを経験してもらう予定である.また,授業時間内では作図作業は手書きで行うことにしているが,夏休みなど授業時間外に3D CADにより作図をした場合は,卓上のCNC加工機を用いて実際に金型の製作する機会を設け,意欲的な学生に対してはより高度な経験ができるように配慮したいと考えている. 射出成形機については,昨年度製作した射出成形機が既存成形機に比べて使い勝手が改善されたことから,残る主な課題は軽量化である.そこで,今年度前半は成形機の構成材料の見直しを行うことにしたい.具体的には,これまで鉄系材料で構成していたところをアルミニウム材料への置き換えを図り軽量化を実現することにしたい.今年度後半PBL授業である3年創造設計製作の授業において,この成形機をベースにしたオリジナル射出成形機の製作に取り組む予定である.授業では,5名前後のグループごとに成形機を設計し製作を行う形態とし,力の伝達機構,材料の投入方法,ヒーターの取り付け方法などでアイデアが盛り込める製作テーマとしたい.また,3年創造設計製作の中でも,1年設計製図の授業で作図したキーホルダーを3年生が3D CADで描き,CNC加工機または3Dプリンタで造形した簡易型を用いて,実際の成形への適用を試みる予定である. 1年および3年の授業実施前後には,授業アンケートの調査も行い,プラスチックに関する意識調査および本研究における教育効果の検証を行う予定である.
|
Causes of Carryover |
今年度は,コロナウィルス感染拡大によりオンライン授業が実施されるなど,通常の教育活動が十分に行えなかった.このため,研究活動および授業での取り組みについても予定していた活動が行えなったこともあり,予算についても十分に活用することができなかった.このため,次年度分と合わせて支出していく予定にしている.
|