2020 Fiscal Year Research-status Report
オンライン教育の受講履歴から学生への総合支援を実現する総合教育システムの研究開発
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20K03092
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
永田 正樹 静岡大学, 情報基盤センター, 准教授 (30844782)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 動画特徴量 / 機械・深層学習 / オンライン教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、当研究課題で学術的問いとして設定した3点の内、主に「1.理解度測定を可能とするオンライン教育支援システムへの機能追加」を実施した。理解度測定の具体的作業は、オンライン教育で用いる動画教材に含まれる特徴量の分析である。教材動画には、パワーポイント資料や教員の黒板板書、化学実験風景など様々な事象がある。これらを教材動画の特徴量と捉え分析した。たとえば、パワーポイント資料のPCフォント文字、黒板板書文字、教員の性別などである。理解度測定を可能とするためには、まずは教育動画にどのような特徴が含まれているのかを把握し、この特徴量と学生らの理解度との関係を分析する。学生らがある教育動画を視聴し、どの動画のどの部分がわかりやすかったかなどの意見をアンケートなどで収集し、その部分に含まれる特徴量を特定する。この特徴量がすなわち理解度に寄与する値となる。 教育動画から特徴量をデータとして得るために、機械・深層学習を用いた「教育動画特徴量分析モデル(以下、分析モデル)」を開発中である。分析モデルの開発には当研究費で購入したワークステーションを用いた。開発フローは、特徴量を特定するための訓練データを数種類の特徴量毎にそれぞれ多数用意し、その訓練データにて学習した(教師あり学習)。この分析モデルは、教育動画に含まれる特徴量を動画内に矩形表示した結果動画として出力する。たとえば、動画内にPCフォント文字、男性教員などが含まれていると、これらを矩形表示した結果動画が元動画とは別に出力される。 令和2年度は、この分析モデルが動画から学習した特徴量を抽出する技術的作用を主に検証した。動画から意図した特徴量抽出は実現できたが、この特徴量は技術的検証の暫定値であり理解度との関連は薄いため、現在は理解度に寄与する特徴量特定を分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析モデルの開発に用いた訓練データはYouTubeなどの学外の教育動画を用いて作成した。学外の教育動画を訓練データとして学習した分析モデルを本学の教育動画に対して分析し、学習させた特徴量を抽出することは実現できている。しかし、この分析モデルに学習させた特徴量は理解度に寄与する特徴量ではなく、あくまで動画から何かしらの特徴量を抽出することを技術的に確認するための暫定的な特徴量である。つまり、現段階では学生の理解度に寄与する特徴量の把握ができていない。 動画から特徴量を抽出することは技術的には実現できているため、現在はこの特徴量に意味のある値、すなわち理解度に寄与する特徴量の特定を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階での分析モデルは、教育動画に含まれる特徴量を矩形表示にて抽出および結果動画として出力する。この特徴量は「画像」である。当初、本研究課題では教育動画の分析に対して主に画像を対象としていたが、研究を進行するにあたり特に理解度に寄与する特徴量には画像以外の要素も含まれるのでないか、という疑問が生じた。たとえば、YouTubeには教育動画を配信している教育系YouTuberが多数いるが、彼らが配信する動画が同じ教育内容(たとえば、数学の三角関数など)であっても、彼らの間にはチャンネル登録数やアクセス数の差が大きく生じている。学習内容が分かりやすい動画に人気が集中しており、この差は教育動画の画像だけでなく、配信者の口頭説明や学習テクニックなどが原因になっていると推測できる。つまり、画像に合わせた適切な口頭・筆記解説や身振り手振りなどのさまざまな特徴量の組み合わせで良質な教育動画特徴群が定まり、この特徴群が視聴者の学習理解につながっていると仮定した。 この仮定を基に、今後は教育動画の特徴量は画像だけでなく音声や教員の挙動なども含めて、分析モデルを研究開発していく。音声や挙動などの分析は当初の計画にでは予定していなかったため、これらを追加研究要素として計画変更を行い進行していく。
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Causes of Carryover |
動画分析に用いるマシンに当初予定より高い計算能力が求められ、このマシンを購入するため次年度以降の研究費の前倒し申請をし、交付された。 このため、次年度使用額が生じた。 今後は音声・挙動等の分析および、これらを含んだ分析モデルの研究開発を実施するため、その経費に充てる。
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