2020 Fiscal Year Research-status Report
アートマネジメント教育における公演批評を通した共創的ディスカッション能力の養成
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20K03136
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
志村 聖子 相愛大学, 音楽学部, 准教授 (30736765)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ディスカッション能力 / 批評 / 舞台芸術 / アートマネジメント人材育成 / エンパワーメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アートマネジメント人材に求められる能力の養成と学習支援方策という観点から、公演批評を通したディスカッション能力の養成のあり方に着目する。初年度は当初、舞台芸術における公演・作品批評の事例等を収集し、内容や手法を分析する予定だったが、世界的なCOVID-19の影響により公演中止が相次いだことから、調査方法の大幅な見直しが必要となった。 そこでまず、①事例対象をオンラインでも収集可能な新聞記事(オランダの日刊新聞TROUW)に変え、コロナ禍において芸術がどのように語られているかという着眼点のもと、テーマや内容、執筆者の立場や切り口、前提となっている背景知識等を整理分析した。新聞のメディア機能として報道・評論・教育・娯楽・広告の5機能があることが指摘されているが、本調査からはエンパワメント機能という新たな機能が見出され、芸術を「語る」ことの多様な意義や可能性が示唆された。本調査結果の概要は学会にて口頭発表済みであるが、今後、論文執筆を進める予定である。 次に、②公演批評にあたって必要な知識や思考技術について考察するため文献調査を行った。初年度は芸術と批評の関係に関する理論に着目した上であいちトリエンナーレの事例を題材とし、芸術作品に関するディスカッションや批評が芸術体験のプロセスの一部を成し、それは社会において芸術をより良く機能させていくためのプロセスであり、そのようにして芸術を民主化していくプロセスが私達の社会を創る営みそのものであることについて論証した。 さらに、③筆者が企画運営に携わる本学の「伝統芸能コーディネーター育成プログラム」を事例に、受講生の学習効果を高めるために必要な要素や取り組みについて実証研究を行った。 以上を通じて、アートマネジメント教育におけるディスカッション能力養成のあり方を具体的に検討するための基盤を形成することを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響により、当初予定していた海外での現地調査が不可能となり、オンラインで遂行可能な調査に切り替えた。その結果、文化記事の調査分析を通して芸術評論におけるエンパワメント機能という新たな視点を得て考察を進めることができ、初年度として一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下の調査や作業を行う。 ・記事の収集を引き続き行うとともに、執筆者の視点やテーマ設定における切り口や前提となっている背景知識等についての分析を進める。 ・上記を基盤として、学生にも実践可能な手法を提案するための検討を行う。 ・教育機関における学生のディスカッションの促進に配慮した学習支援体制についての事例調査を行う。 ・ディスカッション能力の「向上」をいかに測るかに関し、要件を検討した上で、ディスカッション能力の向上が学生の知的成長や学習意欲に与える影響を把握するための手法を検討する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、当初予定していた海外での現地調査が不可能となり、オンラインで遂行可能な調査に切り替えたことから、計上していた旅費は翌年に支出することとなった。
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Research Products
(7 results)