2021 Fiscal Year Research-status Report
Automatic Generation of 3D Terrain Model with Internal Structure that Enables Numerical Experiments of Debris Flow for Disaster Prevention Education
Project/Area Number |
20K03138
|
Research Institution | Chukyo Junior College |
Principal Investigator |
村瀬 孝宏 中京学院大学短期大学部, その他部局等, 教授 (70342053)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉原 健一 岐阜協立大学, 経営学部, 教授 (80259267)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 3次元建物モデル / 自動生成 / 土石流シミュレーション / 建物倒壊シミュレーション / 防災教育 / 力学シミュレーション / ポリゴン分割 / 地理情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
日本は、その位置、地形、地質、気象などの自然的条件から、台風、豪雨、洪水、土砂災害、地震、津波などによる災害が発生しやすい国土となっている。今後も温室効果ガスの増加による地球温暖化により、自然災害が頻発化・激甚化し、甚大な被害の発生が懸念されている。こうした土石流などの自然災害を防止・軽減するために堰堤などの構造物によって土砂移動現象を無害化するような防災対策が急務である。このためにも地質学など、土石流や土砂崩れのメカニズムを研究する「防災科学」やそれを学ぶ「防災教育」が重要であり、仮想空間内で土石流等のシミュレーションを行える3次元建物モデルを自動生成し、活用することが目的である。 これまでの研究で、電子地図上の頂角がほぼ直角の建物境界線を四角形の集まりまで分割し、「互いに直交する長方形の集まり」まで整形し、各長方形の上にBox形状の建物本体を配置して3次元建物モデルを自動生成した。本研究では、当手法を発展させ、3次元建物モデルを構成部材同士が重なっておらず、建物の力学シミュレーションを行なうとき、崩れることのない「力学的に安定」した建物の動的3次元モデルを自動生成することを目指した。本システムで自動生成する建物の3次元モデルは、力学的に安定した構造の建物、いわば構造用金物のない「組積造」の建物を仮想空間で構築するものである。3次元仮想空間内で、「大量の移動要素と動的3次元建物モデルのインタラクション」を可能にし、「津波や土石流などの土砂移動現象と建物の間の相互作用」を再現し、例えば、津波による3次元建物モデル倒壊のシミュレーションを行えるシステムを開発し提案した。 これらは防災まちづくりの整備案の合意形成、あるいは、様々なシナリオに基づく現実に起こりうる災害や災害防止対策の効果を示すアニメーションの作成が可能であり、防災科学における数値実験や防災教育の教材などを提供できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では3次元CGソフトである3ds Maxの物理シミュレーションを行う「MassFX」ツールを用いて、「大量の移動要素」を津波とみなして、「大量の移動要素と動的3次元建物モデルの間の力学シミュレーション」を行った。一般的にDEMをはじめとする力学シミュレーションでは、各オブジェクトが衝突しているかどうかの「衝突検出」を行い、「衝突の深さ」を測定し、この「深さ」に応じて、ニュートンの第2法則を用いて、力と加速度、移動距離を求めて、次の各オブジェクトの位置を求めるというサイクルを繰り返す。「衝突検出」は力学シミュレーションにおいて、もっとも重要なプロセスであるが、この衝突検出において、オブジェクトは「凸包(Convex hull)」でなければ、衝突検出ができないとされる。 そのため、本研究においては、「動的3次元建物モデル」の建築部材作成で、例えば、ブール演算で壁板に窓用の穴を空けた後は、壁板の形状は「凹型立体」となり、物理シミュレーションするために、「凸包立体の集まり」まで分離・分割する。「動的3次元建物モデル」は、このように構成部材を凸包立体の集まりまで分離し、次に、部材が重なって、フックの法則で反発しないように離し、力学的に安定するように、多数の部材を組み上げ、配置して構築した。このようにして、特定の地域を対象に、仮想空間内で「物理シミュレーションを行える部材」で「部材の物理形状(幾何形状とは異なる)が重ならないような構造」で構築された3次元建物モデルを自動生成した。 しかし、開発したシステムにおいては、プログラム上の衝突検出上のバグの発生があり、またシミュレーション結果の精度を現状よりアップさせることが必要である。さらに、実際に発生した土石流の自然災害と本システムのシミュレーション結果を比較することによる検証も必要であったが、この点が予定通り進められていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
土砂災害を考えると、地形内部の土砂や岩盤、入り組んだ地層をモデル化し、実験データとの整合性をとりつつ、力学シミュレーションが行えるように取り組む必要がある。そして、仮想空間の中で、土砂崩れなどが再現し、さらに、「発生した土石流や津波など土砂災害のメカニズムを解明する」、あるいは、地域の地形、地盤に応じて「将来起こりうる土砂災害の様々なシナリオを可視化」するように研究を進める。 そのために、開発したシステムの力学シミュレーションにおけるプログラム上の衝突検出のバグの修正を行う。それと並行して、シミュレーション結果の精度を上げるために、より詳細に地形名部のモデリングをする必要がある。そのために、層理面や断層などの不連続面の向きと傾斜を決める図形に基づいて、「断層境界面となる地層エンベロープ」を生成する以下の生成アルゴリズムなどを明らかにする。 (1)任意の形状の3次元地形モデルを制作するには、トポロジーの異なるドーナツポリゴンから作る必要があり、ドーナツポリゴンからstraight skeletonを生成するアルゴリズム。(2)地形内部をモデリングするための地層の不連続面の向きと傾斜を決める図形から断層境界面となる地層エンベロープを生成するアルゴリズムの開発。(3)3次元地形モデル内に土砂災害対策となる「砂防えん堤」などの構造物を設置し、その効果を検討する。あるいは、「安全地区への集団移転する整備案」を3次元地形モデル内に実現し、予測される土砂移動現象における整備案の是非を検討する。 そして、実際に発生した土石流の自然災害と本システムのシミュレーション結果を比較し妥当性を検討する。さらには、特定の地域に対して、気象条件や地形、地層データを元に、内部構造の形状や要素のパラメータを変え、予測される土砂災害の様々なシナリオのシミュレーションモデルを構築し、その有用性について検討する。
|
Causes of Carryover |
2021年度においては、国際学会で海外出張の予定があったが、コロナの影響で開催が中止となったため、航空運賃や宿泊費などの海外出張費が不要となった。また、研究成果を発表する予定の他の国際学会に関して、その出張旅費と参加費を本科研費で執行予定であったが、査読の結果受理されなかったため不要となった。 国内の学会においても、計画していた学会に投稿したが、すべての学会発表がオンライン開催または誌上開催となり、予定としていた出張旅費が不要となった。また、必要であった一部のハードウェアやソフトウェアなどに関しては、ほかの研究費や料金の必要のないソフトウェアなどで入手した。これらのことにより使用残額が生じた。 当該助成金は2022年度の助成金とあわせて、研究活動の進捗に応じて必要となるハードウェアやソフトウェアの物品購入、今後のコロナ感染状況にもよるが国際学会、国内学会での研究成果の発表のための旅費、最新の研究動向の情報収集等に使用する計画である。
|