2021 Fiscal Year Research-status Report
言語機能・空間認知訓練支援システムの構築と訓練教材の開発
Project/Area Number |
20K03170
|
Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
佐久間 実緒 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (70515139)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
與那嶺 尚弘 沖縄工業高等専門学校, メディア情報工学科, 教授 (00259805)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 高次脳機能障害 / 失語症 / 視空間認知障害 / リハビリテーション支援 / 視線計測システム / 視線解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
福祉施設などにおいて失語症や視空間認知障害の訓練支援に携わる言語聴覚士や作業療法士のニーズを反映した訓練教材および訓練結果の記録・管理を行うシステムとして、『言語機能・空間認知訓練支援システム』を構築するために、2021年度は、訓練教材開発と視線解析システムの基礎機能の開発を行った。 言語機能訓練用アプリケーションとして、言語聴覚士などからの要望を反映した「名前あて」、「じゃんけん」を開発した。「名前あて」は、語想起の訓練を目的としており、表示されたイラストに合う単語を選択する。表示する文字は、漢字、ひらがな、カタカナから選択でき、表示する単語の個数で難易度を設定できる。また、正誤判定と解答にかかった時間をCSV形式で保存し、それらの結果は先行研究で開発した記録管理アプリケーションに反映され、経時変化を確認できる。「じゃんけん」は、通常のじゃんけん、後出しじゃんけん(勝ち、負け)を選択できる。失語症のリハビリだけでなく、教育教材や認知症のリハビリでも使用できるように、音声機能を実装した。 視空間認知訓練用アプリケーションとして、作業療法士からの要望を反映した「なかまさがし」を開発した。問題として表示されるイラストと同じものを複数のイラストの中から選択する。イラストの表示枚数で難易度を設定できる。 視空間認知訓練用アプリケーションを実施中の訓練対象者の視線の動きを把握し、視線と認知の関係を記録することを目的として、Webカメラを用いた視線取得システムと、取得した視線データを解析する視線解析システムを設計し、これらを連携して視線解析機能の基礎機能を実装した。Webカメラの視線取得システムでは、画像処理により瞳孔の移動距離からモニタ画面上の視線位置を計測した。視線解析システムでは、ヒートマップとゲイズプロットの表示機能を実装し、2つの視線計測結果を同時再生する機能を実装した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、言語機能訓練用教材の充実化および作業療法士からの要望を反映した視空間認知障害の訓練教材開発と視線解析機能の実装を目的として進めた。現時点では、おおむね順調に進展しており、言語機能訓練用教材と視空間認知障害の訓練教材を開発している。また、研究計画では、市販の視線計測器を用いた視線解析機能の開発を計画していたが、小規模な福祉施設などにおいては、視線計測器は高額であり導入が難しいことが分かり、Webカメラを用いた視線取得システムの開発と、取得した視線を解析する視線解析システムを開発した。 視線取得システムにおける視線検出には角膜反射法を用いるため、赤外線照射回路の設計を行い、瞳孔中心とプルキニエ像の位置関係からモニタ上の視線位置を計測し記録するシステムを開発した。本システムにおける視線計測は、Webカメラの解像度に依存するが、昨年度に開発した「もぐらたたき」アプリケーションにおいて、視線位置を把握するために必要な分解能は得られている。 視線解析システムは、これまでに開発した視空間認知障害用の訓練教材と同期し、Webカメラで取得した視線を可視化する機能として、ヒートマップとゲイズプロットによる表示機能を実装した。作業療法士から、視線の動きの経時変化を比較したいとの要望があり、2つの視線解析結果を同時再生する機能を実装した。また、マウスの履歴を保存する機能も実装した。視線取得システムと視線解析システムの連携も実現させている。 言語機能訓練に関するシステムと空間認知訓練に関するシステムの連携については、現在、検討を進めている。 当初の計画では、最終年度に予定していたホームページ作成をすでに終えており、現在は公開に向けてコンテンツの整理を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Webカメラを用いた視線取得システムと、その結果を解析する視線解析システムを開発したことから、連続的にイラストが動くようなアプリケーションを開発し、イラストに対する視線の追随を評価する機能を検討し、実装する。また、視線取得システムにおいては基礎機能の実装は済んでいるため、分解能の改善および視線取得の処理速度の改善に向けて、画像処理方法について検討し、実装する。視線解析システムについては、ヒートマップおよびゲイズプロットによる可視化において、表示方法のカスタマイズ機能を実装する。 最終年度は、アプリケーションの評価と視線解析機能についての評価を予定しているが、新型コロナウイルス感染症の状況によっては、福祉施設などへ訪問することが難しく、協力を得にくい場合があると考えられるため、システムの評価方法について検討する。 研究成果の報告のために、コンテンツを整理し、ホームページで公開する
|
Causes of Carryover |
研究協力者との研究打合せおよび成果報告のための研究会参加のための旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症のため、オンラインでの対応となり、未使用となった。また、アプリケーション開発のためにアプリケーション開発のスキル習得として、外部講師による講習会、システム開発に関する情報収集のために言語聴覚士や作業療法士との勉強会の予算を計上していたが、同様の理由により実施が困難になり未使用となった。 次年度は最終年度であるため、研究分担者との対面での研究打合せは、新型コロナウイルス感染症の状況を判断しながら実施したいと考えている。また、外部講師によるアプリケーションおよびシステム開発に関する講習会は、オンラインでの実施も検討し、開催を計画している。さらに、次年度も訓練教材であるアプリケーションの新規開発、視線解析機能に関するシステム開発を進めるために、研究代表者および研究研究分担者の開発環境を整備する必要があるため、次年度使用額は高性能モデルのデスクトップパソコン、システム評価用としてのタブレット端末、Webカメラ、ノートパソコン、電子部品の購入に充てたいと考えている。
|