Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に、学習方法のデザインの研究を実施した. 本論では,筆者が 2018 年から 3 年間継続して実施してきた,大学生の学力調査の結果に基づき,2021 年に記述式問題を大学生 71 名に課して,その解答を,量的および質的に分析した.問題は,国語,理科,社会,それぞれ 5 問の合計 15 問であるが,記述内容を,質的に分析した結果,問題をどう捉えるかという問題の構造に依存することが,分かった.量的なクラスター分析を実施して,質的と量的な分析結果の間に,整合性を見出すことができた.その結果,問題に関連する要素の数と,日常生活との関連性の2つの軸によって,以下のようなコンピテンシーに分類された.日常生活に関わるスキーマが駆動して推論するコンピテンシー(経験力),教科や学問などの知識や見方・考え方を駆動して,要素数の少ない問題を推論するコンピテンシー(教科力),教科力と同じだが,要素数が多い問題を推論するコンピテンシー(俯瞰力),及び感性などの非認知能力に関するコンピテンシーである.このコンピテンシーの分類によって,3 年間実施してきた,大学生の国語の読解力,理科・社会の学力の結果を,説明できることが,分かった. 以上から、日常生活の関りが大きい場合は,日常生活のスキーマが働くので,経験の長い大学生が小中学生よりも正解しやすいこと、日常生活との関りが小さい場合は,学問や教科や分野毎の問題構造(スキーマ)が重要な機能を果たすこと、特に,俯瞰力は,教科横断や STEAM や問題解決などの学習に,有効と考えられることなどの知見を得た。 以上の知見を、査読付き論文誌に投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書における、2022年度の研究計画は、以下の通りである。 2022年度では、2021年度までの知見を活かして、人の学習の認知スキルを伸ばすための学習方法のデザインを行い、予備的な実験を行う。3つ程度の学習方法をデザインする。1つは、知識の獲得を求める学習方法、写真などを提示しながらAIと対話することで学習の認知スキルを高める学習方法、あいまいな検索によって得られる画像などの収集によって、創造的な学習に寄与できる学習方法のデザインを試行的に実施する。 但し、研究の遂行において、学習方法のデザインから学習内容そのもののデザインが重要であることに気付き、その研究に方向をシフトした。その結果、学習内容も学習方法も、それらを横断するコンピテンシーの重要性が抽出された。そのコンピテンシーで分類した結果、以下のような知見を得た。 日常生活との関りが小さい場合は,学問や教科や分野毎の問題構造(スキーマ)が重要な機能を果たす.これらを、教科力,経験力,俯瞰力などと名付けて,各コンピテンシーとして分類した.さらに,感性などの非認知能力に関するコンピテンシー(非認知能力)もグループ化されたので,合計 4 つのコンピテンシーに分類できた.特に,俯瞰力は,教科横断やSTEAM教育や問題解決などの学習に,有効と考えられる. 以上から、学習方法も含めて、より広い研究を遂行することができた。
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