2020 Fiscal Year Research-status Report
U理論に基づいた自律性支援型ESD授業における動機づけ評価指標の実証的研究
Project/Area Number |
20K03176
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
河内 幾帆 金沢大学, GS教育系, 准教授 (90818155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 博 名古屋商科大学, 経済学部, 教授 (10705908)
中井 美和 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (30778080)
村上 一真 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40626058)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | U理論 / 環境配慮行動 / 対話 / エンパワーメント |
Outline of Annual Research Achievements |
不確実性と複雑性が増す社会において、高いレジリエンス力(困難を乗り越える力)や問題解決能力の形成が教育における喫緊の課題となっている。こうした能力形成のカギとなるのが、教育課程修了後も独自の関心や問題意識に基づき継続的に学習行動を行う「自律的に考え続ける力」にあると考えられる。しかし、このような自律性支援型教育プログラムの教育効果を評価する手法が確立されていないため、そのあり方はいまだに模索段階にある。本研究では、教育心理学・社会心理学・質的調査により、教育プログラムにより自律的に学習する態度が形成されたかどうかを評価する「自律的動機づけ評価指標」を構築し、その有効性を実証的に検証する。具体的には、U理論に基づいたESD授業設計を行い、環境問題を中心とした社会課題に対して主体的かつ継続的に取り組む「自律的学習態度の形成」を促進する教育プログラムの作成、および、その評価手法の構築を大学生を対象として行う。
研究初年度である本年度では、主にU理論のケーススタディを含めた文献レビューをすすめた。また、U理論に基づいた授業デザインのプロトタイプの構築と試行を行い、学生からのフィードバックをもとに次年度の授業デザインの改善を進めた。新型コロナウイルス感染症への対応のため、予定していたフォーカスグループインタビューはとりやめ、SDGs関連の社会活動を行っている学生やそうした活動に関心のある学生との対話を通して、若者の社会課題への問題意識形成がどのように起こっているのかのヒントを得、仮説の構築を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本プロジェクトの初年度で予定していた活動内容は、文献レビューの実施とともに、金沢大学生を対象に継続的に実施しているアンケートデータの分析とグループインタビューを通して、環境問題を中心とした社会課題に対して主体的かつ継続的に取り組む「自律的学習態度の形成」を規定する要因の仮説を構築することであった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症への対応のため、研究計画が大幅に変更となった。文献レビューは予定通り進んだが、新型コロナウイルス感染症への対応として、大学における講義形態が変更され、その対応に多くの時間がとられた結果、アンケートデータの分析が進められなかった。またフォーカスグループインタビューも計画通りに進められなかった。フォーカスグループインタビューは、自律的学習の動機付け規定要因(の変化)の計測を行うために必要な「評価指標の開発」および「アンケート項目の作成」を目的としており、本来は、環境保護活動に熱心な大学生を東京・大阪・金沢から数名ずつ招聘して実施する予定であった。日常的に環境配慮行動を実践している彼らにインタビューを行うことで、環境配慮行動を行うようになったきっかけと定着に繋がった要因を検証するためであった。しかし、新型コロナウイルス感染症への対応のため、金沢に招聘することができなかった。 代替として、金沢大学で開講した小規模のSDGs関連科目においてU理論に基づいた教育プログラムのプロトタイプを設計・実施し、教育効果の計測を行った。履修者との対話より社会課題への関心が生まれったきっかけなどについてのヒントを得ることができたが、計画していたアンケート項目を作成するまでには至らなかった。 結果として、研究計画に照らし合わせるとやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度:当研究でU理論に基づいた教育プログラムの設計・実施の対象としている金沢大学におけるESD科目は、その履修者数の多さから、新型コロナウイルス感染症への対応のため、2021年度も対面型の演習が難しいことが予測される。また当初2020年度に予定していたが実施できなかった活動がある。これらの課題に対応するため、2021年度は当初の計画を修正し、以下の研究活動をすすめる。 ①ESD教材の開発:具体的には、2020年度に設計した、金沢大学における小規模のSDGs関連授業を対象としたU理論に基づいた教育プログラムのプロトタイプの改善に取り組み、ESD教材開発につなげる。ESD科目の履修者と比較して、SDGs関連科目の履修者は全般的に社会課題への関心が高いため、2022年度以降に実施予定のESD科目の授業設計に際し考慮すべき点も検討する。さらに、U理論の文献レビューを進めると同時に、研究者自身がU理論実践型の外部ワークショップに参加し知見を深めることで、U理論をベースにしたESD授業デザインのさらなる改善を行う。②フォーカスグループインタビューをオンライン上で実施する。日頃から環境配慮行動を実践していると考えられる北陸および関西圏の大学生を対象とする。③教育効果の検証を目的としたアンケート調査の作成に取り組む。
2022-2023年度:当初の予定通り、自律性支援型ESD授業を実施し、評価データの収集を行う。 2024年:当初の予定通り、データの分析・成果発表・まとめを行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症への対応のため、本年度に予定されていたフォーカスグループインタビューが実施できなかったため、人件費・謝金が当初計画より抑えられた。また、本年度に購入予定であったデータ分析ソフトウェアの選定に遅れが生じ、年度内に購入ができなかったため、物品費が当初計画より抑えられた。
以上の理由より、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、翌年度のフォーカスグループインタビューにおける人件費・謝金や、研究代表者のU理論実践ワークショップへの参加費、データ分析ソフトウェアの購入に充当させる。
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