2023 Fiscal Year Research-status Report
ラーニングコモンズを活かした文系初年次学生のための研究ベース学習の設計と実践
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20K03189
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
辻 高明 長崎大学, 大学教育イノベーションセンター, 准教授 (00454603)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 模擬査読 / ピア・ラーニング / 研究体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では研究ベース学習を「プロジェクトベースド学習(PBL)を念頭に置き,大学生低学年(大学1,2年生)が研究という知の創造活動を体験することを目的に設計したアクティブラーニング」と定義し,大学生低学年に研究を体験させることで,大学で主体的に学ぶアクティブラーナーへと成長することの支援を目的としている.野球に例えるなら,従来のアカデミックスキル教育が「投る・打つ・守る・走る」の4つのスキルを各項目別に作法としてレクチャーするのに対し,研究ベース学習は,草野球でも構わないので,実際にプレーをしながらそれら4つのスキルを体得させることを目指している. そして,研究ベース学習における「科学的方法の体験」は,大きく「フィールド調査(データの収集・分析)」「論文作成と論文の模擬査読・修正」「ポスター発表と質疑応答」からなる.今年度は科学的方法のプロセスのうち,特に学生間の「模擬査読」に焦点を当て,実践と分析を重ねた.結果として,模擬査読では,査読者は原則「条件付採録」という前提で採録条件を具体的に3つ以上書くこと,採録条件は文章及び口頭で説明すること,そして,全員が査読する側・査読される側の両方経験できるようにすることを実施上の「ルール」として設計することが望ましいことが分かった.さらに,学生は模擬査読において,相手から修正点や意見を貰うことに意義を感じていること,また,査読者として相手の論文の問題点や改善点を探る経験を通して,自身の論文の問題点や改善点に気付くことができていることが示唆された.そして,その結果を学会の全国大会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度の研究は滞りなく進行したが,開始年度から2021年度まで,新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のため、実践研究の遂行に大きく支障が出ていた.その分,本研究全体としては計画時よりやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究ベース学習のプロセスについて活動内容の分析と,学生の学習成果の関連性をより詳細に明らかにする.とりわけ,研究ベース学習における各活動のルールの設計と,学生の技能や学習観の変容との関連性について特定する.そして,実践での学習活動のエスノグラフィによる分析と,活動の再デザインを循環させ,大学生低学年に研究体験をさせる研究ベース学習を構築し,本研究の完成を目指したい.
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Causes of Carryover |
研究会やセミナー等がオンライン開催になったため,旅費など出張経費に未使用額が出た.また,データの整理が自身で行える範囲であったため,謝金にも未使用額が出た.次年度,未使用の分は、データ整理の補助の謝金や、成果発表のための対面式の学会・研究会出張等の旅費等に充てる予定である。
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