2022 Fiscal Year Research-status Report
工学教育おけるデザイン学習達成度の定量的・定性的評価手法の提案および検証
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20K03213
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
見崎 大悟 工学院大学, 工学部, 准教授 (00361832)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | デザイン教育 / ファシリテーション / デザイン思考 / ダイバーシティ&インクルージョン / サービスロボット / 音声分析 / 文理融合教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、昨年度までに得られた研究成果を基づくデザイン教育を取り入れた工学教育のフレームワークの有効性に関する実証実験を実施した。具体的には、研究目的に対して(1) デザイン教育において重要なチーム学習におけるファシリテーションに関する評価、(2) デザイン思考プロセスにおける共感力に関する評価について提案および実証実験を実施した。
本研究が提案するデザイン教育では、多様なメンバーでのチーム学習の実施が重要な要素の一つであり、チームの議論を活性化させるファシリテータの役割は重要であり、その効果の評価・検証が不可欠である。本年度では、ファシリテータが利用する具体的な質問手法の妥当性や、ファシリテータ自身の心理的状態、見た目などの様態の違いがファシリテーションに及ぼす影響について検証した。また、ファシリテータ経験の少ない者も扱える会話のフレームワークを提案・検証し、ファシリテーション効果の定量的な評価指標として、会話音声における韻律情報に着目し音声情報処理によるファシリテーション評価の妥当性を検証した。
次に、これまでの調査により、デザイン教育における共感力の学習到達度の評価が重要であると考え、工学部の学生にとって身近なマイノリティの問題である「利き手」の体験を用いて、マイノリティ経験と共感力の習得との関係について評価・検証を実施した。研究の最終的なゴールとして人間中心設計のプロセスに多様な視点を取り入れ、ファシリテーションと共感力の視点からデザイン教育に与える影響を分析することを最終的に工学教育におけるデザイン学習の本質的な役割を発揮することの支援を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ファシリテーションの評価指標として、会話の韻律情報である音声ピッチに着目し、当初の研究計画では対面でのチーム学習を評価する予定であったが、感染症対策の影響によりオンラインで課題解決型ディスカッションを実施した。ディスカッションはファシリテータ経験の少ない者が進行し、その対話の活性度をファシリテーション効果として音声ピッチにより評価した。チームの議論における会話音声のピッチを分析した結果、高い音声ピッチの対話におけるオープンクエスチョンは、ファシリテーション手法としての有効性が示唆された。次に、オンラインでの音声だけのコミュニケーションに加えてアバターを用いたオンラインでのチーム学習をおこなった。音声とアバターによる会議でのファシリテーション効果には違いが表れなかったものの、定性的なアンケート結果では、アバターを使用したディスカッションは参加者からの評価が高く、主体的な発言が多かったことがうかがえた。音声分析の特徴量はディスカッションの活性度測定の指標になる。音声分析の結果、基本周波数(ピッチ)の最大値とダイナミックレンジが対話の活性度の指標になると示唆された。オンライン上でのディスカッションでは、相手の顔が見えない場合があり、対話を促すファシリテータにとって、そのことがファシリテーションを妨げる要因になっていることがわかった。デザイン教育の共感に関する評価手法に関しては、サービスロボットを例題とした文理融合型の教育課題および、デザイン教育でのプロジェクトにおける多様性の体験の導入について評価方法の提案をおこない、実証実験を実施した。この方法を導入した講義において、デザイン講義での学生の課題を比較することで、短期的には共感力の向上が評価できるものの、デザイン教育において長期的な共感力を生み出すことには至っていないことが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
工学教育におけるデザイン学習の達成度を定量的・定性的に評価する手法の提案および検証を目的とした研究として、過去3年間の研究期間では、コロナ禍による行動制約の影響で、限られたサンプルの中での有効性検証にとどまりた。2023年度より、行動制限に関する各種規制の緩和が予定されていることを受け、研究期間を1年間延長し、実証実験の対象範囲を拡大して手法の有効性を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は引き続き,COVID-19による対面授業の制約および,国際会議等の渡航禁止があっため執行できない予算があった.2023年度は通常の状態に戻ってきたため本年度に予定を変更して予算を実施する.
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