2020 Fiscal Year Research-status Report
Construction of Instructional Design for Individual Action of Children and Students Using Microscale Experiments Method
Project/Area Number |
20K03227
|
Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
芝原 寛泰 京都教育大学, 名誉教授 (60144408)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | マイクロスケール実験 / 教材開発 / 主体的学習 / 探究学習 / 小学校理科 / 中学校理科 / 高校化学 / 理科教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は研究期間初年度として、研究目的である「児童生徒参加型の主体的学習を支援するマイクロスケール実験による授業デザインの構築」に向けて、教材開発と実践活動を中心に取り組み、学会発表、論文その他の公表も継続的に行った。令和2年度は、小・中学校の次期学習指導要領の改訂の主旨を踏まえて、児童・生徒が主体的に関わることを通して、実感を伴った理解を助ける教材開発と実践的検証を行った。具体例として、「マイクロスケール実験とプログラミング教育の連携」について取り組んだ。 新学習指導要領の実施に伴い、プログラミング学習が必修化されるが、その学習成果を理科教育に応用することにより、プログラミング学習の定着化、および学習の有用性を実感する教材が必要と判断した。マイクロスケール実験は小型の器具を用いること、また個別実験で実施できることに特徴があるが、一方、プログラミング学習も個別による実施が基本であり、この点、両者の連携も円滑に進められると判断した。具体的には、小学校4年理科の単元「電気の通り道」および中学校3年理科「イオンの性質」を対象に、プログラミング教材の一つで汎用性の高い「micro:bit」を用いた教材開発を行った。マイクロスケール実験で行っていた今までの教材実験に、micro:bitを活用して、実験結果を視覚的に記録することができる。プログラミング学習を理科実験に応用することにより、両者の学習の知識の定着させることも狙いである。 研究結果は主に理科教育学会において、課題研究発表会等の発表を行った。研究期間において開発した教材実験は3件である。令和2年度は、学会のリモート開催あるいは誌上発表にとどまった。また開発した教材の実践的検証をほとんど進めることができなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的の趣旨として「児童生徒参加型の主体的学習を支援する」をあげているが、具体的には、一つ目に「マイクロスケール実験とプログラミング教育の連携」を視野にいれて教材開発を取り組んだ。マイクロスケール実験による個別実験と、プログラミング学習の活動は、それらの実施形態において親和性があり、互いに主体的な学習を促すことが期待できる。マイクロスケール実験による実験途中の様子や記録を、micro:bitを使ったプログラミングによりパソコンあるいはタブレットに残すことができる。この特性を生かし、状態変化や化学変化さらには環境変化における温度や圧力の経時変化をリアルタイムに記録することができた。マイクロスケール実験の教材開発におけるデータの定量化の課題を解決する可能性がでてきた。同時にプログラミング学習の知識や技術を、理科実験に活用できることを認識させる教材となった。 一方、主体的な学習を促す方策の二つ目として、児童・生徒にとって身近な気体をとりあげ、マイクロスケール実験による教材化を行った。身近な気体として酸素、二酸化炭素をとりあげ、以前に開発したプッシュバイアル瓶を用いた実験方法を、さらに簡易化を目的として改良した。また気体の発生方法として、例えば二酸化炭素の場合、卵の殻や貝殻など身近な材料を用いて、安全性を考慮しながら、より理科を学ぶことの意義を実感させる工夫を行った。開発した教材実験の有効性を実践により確認する段階まで進めることができた。 令和2年度においては、コロナ禍の中、ほとんどの研究活動について形態を変えて実施や中止となり研究の遅延も起こり、学会は要旨集の発行のみにとどまり、また教員等への研修も中止となった。特に開発した教材実験の実践的検証があまり進まず、次年度へ持ち越すこととなった。また国際会議への出席は次年度の計画に振り替えた。学会発表は3件、論文発表は1件である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度においては開発した教材実験を、通常の授業だけでなく地域の実験教室、教員研修、ひらめき☆ときめきサイエンス等においても活用して、教材としての有効性の確認と、今後の研究の課題の抽出する。令和2年度において実施予定であった実践的検証を最優先に進めることになる。 前年度の研究経緯より、プログラミング学習との連携により、マイクロスケール実験の教材開発におけるデータの定量化の課題を解決する可能性を確認できた。同時に開発した教材は、プログラミング学習の知識や技術を、理科実験に活用できることも確認できたので、この点にも注視して進める。一方、学校現場への普及には、費用面においても検討が必要である。より安価な材料、機材を用いて教材開発することも課題としてとりあげる予定である。 また授業や教員研修における実践的検証に向けて、操作の簡略化、マニュアルの整備も行ったが、多くの課題もみつかったので、解決のための改良を検討する。 気体の発生実験においては、すべての操作を一人で行えるように、ミニ試験管による気体の発生と捕集を基本とする教材実験について、操作面や試薬の準備方法に注目して、さらに改良する。開発した教材実験の有効性を実践により確認しながら進めることになる。コロナの感染状況にも依存するが、できるだけ実践の場を設定できるようにする。安全性の高い実験であれば、遠隔授業による指導の可能性も検討する。 研究課題の趣旨に沿った教材開発のテーマをさらに追加することも必要である。マイクロスケール実験は化学領域が中心であったが、さらに物理領域、生物領域、地学領域を含む理科全体に及ぶ教材実験にも拡張したい。例えば物理領域では、児童・生徒にとって実感を伴った理解が困難な、電磁気の分野も対象とする予定である。特にmicro:bitのもつセンサー機能を活用して、電気や磁気に関わる現象を可視化することを検討する。
|
Causes of Carryover |
令和2年度においては、コロナ禍の中、ほとんどの研究活動について形態を変えた実施や中止となった。学会はリモート開催となり、そのため出張旅費等の支出がなくなり、残金が生じ次年度への繰り越しとなった。教材開発のための材料費等は予定通り支出した。
|
Research Products
(5 results)