2020 Fiscal Year Research-status Report
探究を通した深い学びのための理科教師の教材知と学習知に関する研究
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20K03233
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
渡邉 重義 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00230962)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 探究 / 教材知 / 学習知 / 理科学習 / 教員養成 / 教員研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症が蔓延した影響から、学校現場での調査、教員を対象とした調査が困難であったため、計画していた研究に支障が生じた。研究機関である大学でも教育・研究の活動に混乱が生じたこともあり、実際に実施可能であることで研究を行った。その結果以下の研究成果を得ることができた。 1.教員養成段階における大学生が抱く理科教師として必要な資質・能力の調査:中等理科教育法を受講している大学生(93名)に対して、理科教師として必要だと思う資質・能力を調査した結果、43%の大学生が「説明する」「教える」「話す」能力を取り上げていて、教師が解説して生徒に理解させるという授業観が少なくないことがわかった。一方で生徒が主体的に考えたり学んだりすることを指導支援するような能力を取り上げていたのは18%であり、生徒が研究すること、科学的な思考、課題解決を支援することなど「探究」に関わる視点を取り上げていたのは数名であった。理科の内容についての理解という捉え方はあったが、「教材知」につながるような見方はな認められなかった。 2.理科の授業実践事例を資料にした「教材知」「学習知」の分析:小・中学校における研究授業等における実践例8件を探究に関わる「教材知」「学習知」の観点から分析した。その結果、「教材知」については、実験結果の分析や解釈の方法、教材の特質に応じた結果や考察の表現方法、教材・教具の開発(自作)などについての知識が抽出できた。「学習知」については、疑問・問題のつながりや配列、課題の導出のための手立て、実験結果や解釈の多様化への対応を抽出することができた。 3.探究的な学習展開の事例提示:中学校理科「細胞の学習」および社会教育施設と連携した動物の体のつくりや分類についての学習において、探究的な学習の展開例を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、教師の「教材知」と「学習知」の実態を明らかにして、教材知と学習知の有機的な結び付きによる探究学習の行動と実践のための理論を提案し、それを育成するための教員養成と教員研修の具体策を示すことを目的にしている。初年度は、理科教員の教材知と学習知の実態調査を中心に研究を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の流行により、学校現場では日常的な授業が行えず、遠隔授業等の対応で教員が多忙な状況が1年間続いた。研究を目的とした学校現場での調査、教員を対象にした調査などを実施することが困難であったため、教員養成における学生の実態調査や過去に実施された授業実践の報告などを調査対象にした研究しか実践できなかった。さらに令和2年度は、所属する学部において教務委員長職にあったため、学部における改組のための準備や書類作成に加え、新型コロナウイルス感染所への対策、カリキュラムや授業等の変更など、予定外の会議や実務に時間を割かなければならなくなり、研究のための時間を十分に確保することができなかった。以上の理由により、当初の研究計画から大幅に遅れいている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度も新型コロナウイルスの影響が学校現場に及ぶことが予想されるため、現職の教員を対象にしたアンケート調査の実施は容易ではないと考えられる。そこで、リモートなどによる遠隔通信で、教員と個別に面談し、教材知や学習知の実態調査を行うことを検討する。また、中学校理科の教科書の改訂が行われたので、教科書等における探究の取り扱いを調査し、昨年度改訂された小学校の探究の取り扱いと比較する。 また、過去の授業実践事例の報告等を資料にして、探究的なプロセスの解析、そこに必要となる「教材知」および「学習知」の分析を行い、鍵となる「教材知」「学習知」の特徴を明らかにする。過去の授業実践例は、学校現場の研究会等で実施された探究的な展開をもつ授業を報告書やインターネットでの報告の中から抽出する。 熊本県の教育センターで実施される予定の初任者研修等に関わる予定があるので、そのような機会を利用して、教員研修における探究に関わる「教材知」「学習知」の学びについて試行し、研究成果を生かした具体策の提案のための基礎資料を得る。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、学校現場で行う調査が実施できず、調査に必要となる物品費や出張費の使用がなかった。また、研究成果の報告を行う予定であった学会や研究会がオンライン等の開催となったため、その分の出張費の使用もできなかった。さらに研究機関における教育・研究の混乱もあって、教材研究等も予定通り実施することができなかった。以上の理由により次年度の使用額が生じている。令和3年度は、前年度に予定していた教材研究を行い、さらに実施可能な範囲で、学校現場の調査等を行う。実際に現場に行くことができない場合は、教材や調査の機器を学校現場に送って、現場の教員の協力を得て、データ等を収集する。
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Research Products
(6 results)