2021 Fiscal Year Research-status Report
社会構成主義的認知理論に基づいた災害科学コミュニケーションの確立
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20K03236
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大木 聖子 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40443337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮前 良平 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (20849830)
大門 大朗 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(CPD) (20852164)
岩堀 卓弥 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 特別研究員(PD) (50835999)
中野 元太 京都大学, 防災研究所, 助教 (90849192)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 災害科学 / コミュニケーション / 理科教育 / ナラティヴ / 地球システム |
Outline of Annual Research Achievements |
災害科学の知識を防災につなげるための,科学的知識のより良い伝え方・位置づけ方を模索するため,埼玉県の防災教育重点校の小学校をフィールドとして,2つの理科の出前授業(「理科教室」)を実施した。これら2つの実践においてはともに,「地球システム」と「自分と地球のかかわり」に焦点を当て,「ナラティヴ(語り)」を通じて地球科学の知を物語化して共有することを重視した。 研究の実施にあたって,ナラティヴによって個人の文脈の中で意味的なつながりとまとまりをもった形で現実を構成する知識のあり方を物語モードとして整理し,それを自然科学の根底にある論理実証モードとの対比の構造に位置づけた。この枠組みを踏まえた分析により,参加者が地球システムや災害現象に関する語りを通してその意味を彼らの日常の文脈の中に再構成していく傾向について考察した。 2つの実践の結果,科学の知識はナラティヴ(物語モード)を活用して伝達されることで,単に「わかりやすい」知識としての(論理実証モード的な)理解を越えて,自らが生きる固有の世界の文脈に位置づけられることがわかった。また,ナラティヴによる知識共有のあり方を通して,人間が介在する余地もない大きなシステムとして動いている地球の中に自分たちが暮らしているという関係性を,実感をもってとらえ直す傾向が見られた。さらに,地球の全体像をふまえた地震・雨の理解によって,その現象に「(地球システムの一部として)必然的に起こるもの」という新たな意味づけがなされ,納得感や受容,そして災害へのポジティブな向き合い方へとつながった。 これらを通じ,災害科学の知識を防災行動により資するようにするための位置づけ方は,災害や地球に対して謙虚に向き合う姿勢を形成するものであることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染状況の悪化を受けて延期され続けていた理科授業が,12月についに実施できたことが大きい.フィールドとなってくれた学校とは防災教育で長く協働しており,醸成されていた信頼関係によって,「6年生の卒業前にぜひ特別授業をしていただきたい」と言っていただけた. 結果的に,有志ではなくひと学年全員分のデータを得ることができた.年度末にかけての分析はかなり大変だったが,良い結果が得られたと思う. 一方で,定量化については難航している点が課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
まとめの年度に入りつつある. 災害科学コミュニケーションの,サイエンス・コミュニケーションやリスク・コミュニケーションに対する位置づけについてはかなり明確になってきたと捉えている.すなわち,人間の力の及ばない巨大な地球のシステムについてある種の諦観を覚えつつも,自分のほうが避難しよう,といったポジティブな姿勢を抱くことである.これには社会構成主義的に自然災害の意味を獲得することが不可欠である. これらの研究をまとめ,必要に応じてウェブ調査を実施して検証を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により,遠隔地での授業実施を断念したため,旅費が生じなかった.また,首都圏での学校で実施できたことから,ウェブ調査費が不要となった. 予算は国際学会誌への投稿料へと活用したいが,査読結果によってはデータ増強のためのウェブ調査に回す可能性もある.
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