2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集技術に関する科学リテラシーの構築~e-learning教材の開発~
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20K03245
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
冨永 陽子 岩手大学, 研究支援・産学連携センター, 客員准教授 (70775361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 幸男 岩手大学, 農学部, 准教授 (10400186)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 科学リテラシー / ゲノム編集 / 遺伝子組換え / バイオテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゲノム編集技術を主たるテーマとして、現代生命科学における科学リテラシーの構築に寄与するネットワークを介した教育システム(以下e-learning)の開発を目的としている。 主に初年次の大学生を対象とした授業、アンケートおよびインタビュー調査等を通して、「ゲノム編集技術」に関係する生物学用語等の理解度、および生物の遺伝子改変技術の応用に対する態度を調査し、科学リテラシーの構築に関連する因子と課題の抽出を行った。また、問題解決型学修を通じて、模擬研究計画を作成し、研究開発から社会への公表までの疑似体験を行うことにより、技術の応用がもたらすベネフィットとリスクについて検討した。さらに、遺伝子改変生物に関連した情報の増加にともなう社会的な状況の変化をふまえ、関連する研究の進展を調査し、環境および社会への影響、倫理的課題等を考察したうえで、社会に向けたコミュニケーション手法の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、ゲノム編集技術について理解するために必要となる事項について、学生から得られたデータを収集し、生命科学に関する認識と理解度についての実態の把握、データベースの作成および分析を行った。大学入学時とその後のデータを比較することにより、科学リテラシーの発達あるいは変容についての知見が蓄積され、得られた回答の分類をもとに、教材の基礎的なシステムの構築を行った。 また、問題解決型学修において、実際のゲノム編集実験に関係するデータに基づき、グループワーク形式の討論を行い、遺伝子組換え技術およびゲノム編集技術に関する科学リテラシーの構築についての課題を明らかにするとともに、持続可能な開発目標と関連づけ、社会に向けたコミュニケーションの手法を開発することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年は、ゲノム編集技術がノーベル化学賞の受賞対象となったことに加え、ゲノム編集技術を用いて開発したトマトが日本国内初の「ゲノム編集食品」として届け出・受理されたことからメディア等で取り上げられる機会が増加し、「ゲノム編集技術」に関する社会的な認知の状況は前年までと比較して大きく変化した。また、遠隔講義の実施を余儀なくされたことから学生の学習環境が大きく変化するとともに、e-learningに関する技術や知見が幅広く普及した。これまでに収集したデータについては、学習管理システム(LMS)等を用いて収集したものと筆記による回答を比較し、教材のコンテンツ作成に活用するとともに、より効果的な学習者へのフィードバックの方法について検討を進める。 また、一般的な市民を対象とした調査に関しては、上記の社会的な状況の変化をふまえ、ゲノム編集によって作出される生物と、現在市場に流通している遺伝子組換え作物との差異をより明確にするよう設問を検討する。さらに、情報量の増加が必ずしも多角的な視点からの議論につながっていない現状をふまえ、副次的産物や環境への拡散等の潜在的なリスクに関する議論を深め、汎用性が高く学習の深化をもたらすe-learningシステムの構築につなげていく。
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Causes of Carryover |
実験・データ解析の補助を行う研究補助員について、当該年度は当初予定の作業従事時間よりも少ない労働時間しか確保することができなかったため、次年度の謝金として使用する。物品費、旅費、人件費・謝金については、今後の研究の推進方策に記載した実施内容にしたがって使用する。
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