2021 Fiscal Year Research-status Report
植物の表現型可塑性に着目した環境教育教材開発のための基礎研究
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20K03246
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
佐野 史 群馬大学, 共同教育学部, 教授 (30313018)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オオカナダモ / 体細胞分裂 / 休眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
オオカナダモの可塑性を利用した教材開発の一環として、根の体細胞分裂の観察を試みた。オオカナダモを栽培すると、発根するときとしないときがあるが、個体を人為的に分割すると比較的再現性よく腋芽の部位からの発根が促されることがわかった。この根を酢酸バイオレットによって染色してみたところ、同実験によく用いられるネギやニンニクの根よりも染色されにくく、汎用的に用いられる濃度(酢酸バイオレット:1M塩酸=7:3)より塩酸を多めにし(同6:4)、室温で20~30分程度と少し長い時間かける方がよく染まることがわかった。根の長さと分裂頻度の関係を予備的に調べたところ、高い相関は見られないようであった。このことから、根が生えていさえすれば体細胞分裂の観察実験の教材として使える可能性が示唆された。 冬季において休眠状態となる環境条件を探るため、休眠状態に移行したオオカナダモが入った室内の水槽の水温を測定したところ、12℃から17℃くらいであったため、人工気象機で昼18℃、夜12℃設定で栽培したが、休眠は見られなかった。水温を詳細に検討したところ、室内の水槽では光環境では午前中は低く夕方から夜にかけて高くなっていたことから、人工気象機では光と温度のリズムが適当でなかった可能性が示唆された。 光合成様式の変換に関しては、葉へのデンプン蓄積状況が多く見られる際の水温条件を検討したところ、30℃前後と高い温度である方がよく蓄積する傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オオカナダモの可塑性を引き出す環境要因の特定に手間取ってしまっており、再現性よく見たい現象を誘導することができておらず、光環境の変化に応じた光合成様式の検討も行えていないなど、全般的に遅れてしまっている。ただ、根の体細胞分裂の観察に関しては予想と少し違う結果が見えてきており、新たな教材開発の可能性が見えてきた。それらを合わせて考えて、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
根の体細胞分裂の観察については、個体の切断の他、流れのある条件での栽培を試みるなど、引き続き発根を促進する方法の検討を行うとともに、根の長さと分裂指数との関係を精査する。休眠については、光と温度のリズムをずらす方策を考えて、人為的に休眠を誘導できるようにしたい。光合成様式については、二酸化炭素の添加方法を検討する。
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Causes of Carryover |
研究がやや遅れてしまっており、オオカナダモの可塑性を引き出す環境要因の方向性が特定できておらず、予定していた詳細な解析に入れなかった分、そのための機材や試薬の購入を行わなかったため。
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