2020 Fiscal Year Research-status Report
高校新設科目「理数探究」のための高大連携・科学教育支援システムの開発と実践
Project/Area Number |
20K03277
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
福本 晃造 琉球大学, 教育学部, 准教授 (80549816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉尾 幸司 琉球大学, 教育学研究科, 教授 (20433089)
佐藤 洋俊 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10342528)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 理数 / 探究活動 / 高大連携 / 教材開発 / 教育評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度3月に公示された高等学校学習指導要領では、高等学校に新しい教科「理数」を設け、主体的な探究活動を行う「理数探求基礎」及び「理数探求」が各学科に共通する科目として新設されることが示された。これは、次期学習指導要領の目玉の一つとして新設されるもので、「将来、学術研究を通じた知の創出をもたらすことができる創造性豊かな人材の育成を目指す」ための探究的科目である。そのため、効果的な実施にあたっては、カリキュラムや評価方法、大学等の研究機関が学校を支援する包括的なシステムに関する研究が必要である。本研究では、有効性が確認された手法・成果等を学校現場にいち早く発信するために、新学習指導要領が実施される前に、新科目に対応した高大連携・科学教育支援システムの開発を行い、研究協力校での先行的な実践研究を通してその効果を検証するとともに、他の高校への普及啓発を図っている。これを実現するため、(1)探究の進め方やモデルとなる教材の開発、(2)新科目の評価方法の確立、(3)協力関係・成果発表機会・教員研修の実現、の3つについて取り組んでいる。(1)では、指導事例として高校生による科学研究活動指導を行った。化学分野での取り組みは、その成果を国際誌にて発表する高い水準のものもあり、企業と連携した産学共同指導モデルを作ることにも成功している。(2)では、小中高校生を対象に「一枚ポートフォリオ評価(OPPA)」を使用した評価方法の開発に取り組んでおり、児童・生徒の研究概念の発達や適応変化について調べた。(3)では、琉球大学と沖縄県教育委員会が共催する「沖縄科学技術教育シンポジウム」をオンラインで開催し、児童・生徒の研究成果発表や交流、情報発信の場を提供するとともに、各学校の探究活動を支援するための地域連携体制として機能することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)探究の進め方やモデルとなる教材の開発、(2)新科目の評価方法の確立、(3)協力関係・成果発表機会・教員研修の実現、の3つについて取り組んでいる。(1)については、指導事例として中高生の研究指導を実施した。化学分野の研究に取り組んだ高校生の一部は、国際学術雑誌での発表に至る高い水準を示している。海ブドウの名称で知られるクビレズタの閉鎖型養殖システム開発では、民間企業との共同研究形式をとっており、産学共同指導モデルを作り出すことにも成功した。これらの事例は、指導方法と合わせて学会にて成果発表を行った。また、探究活動に始めて取り組む児童・生徒を対象とする授業開発にも取り組んでおり、(2)で示す学習分野・単元ごとの対面・オンライン学習効果比較も行った。(2)については、「一枚ポートフォリオ評価(OPPA)」を使用した方法の開発に取り組んでおり、教育プログラム受講による空間認識を含む認知過程の変化を確認することができた。この評価方法を使用することで、対面型授業とオンライン授業が与える概念変化の違いも明らかにした。さらに、質的テキスト分析法の開発にも注力しており、テストプログラムの制作も行った。(3)については、琉球大学と沖縄県教育委員会が共催する「沖縄科学技術教育シンポジウム」を活用した高大連携・科学教育支援システムの開発に取り組んでいる。特に、2020年度ではオンライン開催によって実施しており、従来型の対面開催との効果比較を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初計画では、対面での教育プログラム提供を前提とした開発を計画していたが、急激に拡大するオンライン化を見据え、2020年度より対面・オンラインの両手法を取り入れた研究としてきた。今後も、この方針に沿って研究を推進する。 児童・生徒が取り組む探究(研究)活動では、当初の想定よりも大きく上回る水準のものが見受けられたため、彼らの成果の論文化にも努め、その指導法も含めた事例集製作を目指す。この指導過程では、常に「一枚ポートフォリオ評価(OPPA)」を使用した評価に取り組む。情報分野など、一部の分野ではオンラインのみによる指導が可能であることが明らかになりつつある。そこで、オンライン化を見据えた能力評価手法開発にも着手する。その際、質的テキスト分析法は、対面を必須としないため有力であることが期待できる。高大連携・科学教育支援システム開発でも、オンライン化を取り入れるメリットは大きく、離島やへき地での活用が期待できる。 このように、従来の教育手法にとらわれない、幅広い視野に立った研究開発を引き続き推進していく。
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Causes of Carryover |
国外にて開催される国際会議での成果発表や、国内外での情報収集を計画していたが、学会等が急に中止になり旅費の執行の目処が立たなかった。次年度は、学会開催の状況を確認しながら適切な執行に努める。
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