2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバリゼーションと組織の適応課題:組織の価値生成と個人の精神健康
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20K03291
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 由紀子 京都大学, こころの未来研究センター, 教授 (60411831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹村 幸祐 滋賀大学, 経済学部, 教授 (20595805)
中山 真孝 京都大学, こころの未来研究センター, 特定助教 (40838398)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 組織文化 / 相互協調性 / 成果主義 / グローバリゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の企業・組織が培ってきた人事制度や社内の文化形成による人材教育・管理システムは、近年のグローバル競争においてその基盤の弱体化が起こり、制度的変更を迫られている。日本企業・組織は一方で、社員教育等において日本文化特有の組織運営を維持しようとしている側面がある。組織内のこうした制度と文化のあいまいな関係は、従業員にとっては心理的に負荷のかかる状況であるとも言える。社会制度の変化のスピードと、組織内部の文化や人の心の変化のスピードとは同一ではなく(内田, 2018)、その結果として個人においてはメンタルヘルスの問題が、組織においては非合理的な意思決定や人事管理上の問題が生じている可能性がある。本研究では特に2000年代以降、組織や企業が制度的な変化を迫られたグローバル競争下において、(1)どのように組織文化の変化が生じたか、あるいは生じていないか、(2)その結果として管理職を含めた従業員がどのように心身の健康、幸福感、働き甲斐を得ているか、あるいはそれらが損なわれているか、(3)組織の経営者や管理職はこれらをどのように認識し、将来ビジョンを策定しているか、の3点について実証的研究を実施する。調査データのマルチレベル分析と、企業文化・理念についての内容分析の質的な検討を融合させて実施する。 本年度は特にコロナ禍における働き方の変更や行動規範の修正なども視野に入れた調査を実施した。具体的にはN=900名以上の従業員への調査を2020年2月に実施し、働き方の変化や価値観の変化、他者との関係性、メンタルヘルスなどについて尋ねた。現在データ整理と分析を行っている最中である。 さらに、これまで研究代表者と分担者が構築してきた企業調査データより従業員3000名程度の幸福感や企業内の「つながりの意識」、精神健康の状態、価値観、行動原理、動機づけなどを検討し、投稿論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍において、企業従業員への意識調査は回収率が高く、十分なデータ収集を実施することができた。 ただし、コロナ禍ということで英国の研究者との対面での打ち合わせが不可能になり、英国の研究者はロックダウンなどで調査にかける時間への修正が迫られるなど、予定通りにいかない面もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度中に収集したデータを分析し、中間管理職が健康や幸福を実感するようなマクロ状態(職場で共有されている価値観等)を検討する。さらに2021年度中に企業から.経済環境の変化や、業界独自の環境変化等が、どのように認識され、どのような制度改革を実施してきたのかを調査する。既存の労働統計、企業がウェブサイト等で公開している情報、さらには企業における聞き取り調査の内容を分析することで精査する。聞き取り調査の一部はすでに研究チームが2015年度から実施してきた各企業への調査の記録に基づき内容分析を実施するが、不足している業態における企業については数社程度、追加で実施する。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍の影響で企業別追加調査や聞き取り調査ができなかったため
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