2021 Fiscal Year Research-status Report
職場の改善的発言及び協働的工夫を促進する研修の開発:フィードバック場面を活用して
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20K03298
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
繁桝 江里 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (80410380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 裕幸 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50243449)
林 直保子 関西大学, 社会学部, 教授 (00302654)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フィードバック / プロアクティブ行動 / チーム / リーダー / 研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
チームで働く正社員を対象にインターネット調査を実施した。調査目的は、次年度以降に行う研修の基礎データとして、チームのリーダーである上司のフィードバック頻度およびフィードバック方法が、メンバーである部下の主体的な行動(創意工夫をする、改善を志向する発言を行う)とどのように関連しているかを確認することであった。 メンバーが主体的な行動を取ることがエンゲージメントを高めるプロセスまでを含めたモデルについて、565名の回答を分析した結果、リーダーのポジティブなフィードバック(PF)とネガティブなフィードバック(NF)の頻度が多いほど、メンバーが創意工夫および改善的発言をするという関連が示された。また、PFのみがチームの心理的安全性の認知を媒介して改善的発言を高めるなど、PFとNFが質的に異なる効果を持つ可能性が示唆された。 フィードバック方法としては、組織心理学で古くから検討されてきた概念である組織的公正性に加え、チーム性(チームの目標・役割・協働を明示しているか)、発展性(フィードバックが受け手の発展を目的としているか)、反応性(メンバーの発言に対するフィードバックや対応をしているか)について検討した。これらは「良質なフィードバック」として相互に相関が高いものの、改善的発言はチーム性との関連が強めであるなどの差異も見られた。 さらに、研修対象企業の選択に繋がる情報として、どのような場合に上記の関連が強まるのかを検討した。まず、コロナ禍における研究であることから、業務が対面で行われている程度で比較し、対面が少ない場合は多い場合に比べ、NF頻度と改善的発言の関連が弱く、心理的安全性と改善的発言の関連が強いことが示された。また、回答者の職業が技術系か事務系かを比較した結果、PF頻度の効果は同様であったが、NF頻度およびのフィードバック方法の効果は技術系の方が強いという違いが見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、勤務形態が通常時とは大きく異なり刻々と変化する状況において、仮説の検証が可能なデータを取得することは難しいと考え調査実施を見送った。2021年度もコロナ禍は続いていたものの、一般企業の勤務形態においては、その対応にある程度の安定が見られたため当該調査を実施した。ただし、人を集めて実施する実験や研修には引き続き感染リスクがあるため、研究計画を後ろ倒しにしている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
推進方策としては主に下記の2点を検討している。 まず、研修参加者の動機づけに対する方策である。研修の対象企業に対する協力の交渉は、企業との交渉窓口を担っているコンサルタントと共に、2021年度より進めてきた。企業研修を実施している協会を介して協力企業を紹介していただくことになったため、協会の担当者をインフォーマントとして事前打ち合わせを重ねている。そのプロセスにおいて、研修をより実践的価値の高い企画に改善し、また、担当者を通じて研修対象企業および参加者に説明することで、動機づけの促進をめざす。 次に、新型コロナウィルス感染症による影響への対応が必要である。2022年度に実施する研修では、グループワークを行う予定である。感染予防対策は当然行うが、状況によってはオンラインで実施する可能性も検討している。また、研修参加者が研修の成果を職場に持ち帰って実施するまでを研修のプロセスに含めているが、リモートワークも想定したものとする。 なお、このような対応は、コロナ禍と言われる時期に特有の暫定的なものとしてではなく、今後より一般的となるであろうオンラインでの業務遂行に即した積極的な変更と捉え、一つのリサーチクエスチョンとして加えていく。また、本研究の検討課題がリモートワーク時にどの程度適応可能かどうかについても、並行して検討を進めることとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響により、研究者間での出張を伴うミーティングは回数を制限している。また、2022年度も感染状況次第で、研究費の使途を変更する可能性があることから、使用額を最低限にとどめている状況である。 主な使用計画としては、データ取得の各プロセスに必要な費用として、ICレコーダー、ノートパソコン、テープ起こし代、テキストマイニングや階層データの分析ソフト、研修の事前事後の調査画面構築費、および、コンサルタントへの謝礼を予定している。
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