2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of comprehensive perception of fairness: Dual process approach
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20K03299
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 洋一郎 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (70454395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 倫紀 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (20373110)
佐々木 宏之 新潟国際情報大学, 経営情報学部, 教授 (80389949)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 公正知覚 / 不公正知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大局的公正という単次元の構成概念を提起し、大局的公正知覚のメカニズムを実証的に明らかにしようと試みるものである。従来、公正さは、結果の公正、手続き的公正、対人的公正という多次元概念として捉えられてきた。これに対して我々は、公正知覚とは、本質的には単次元であると提起した。 2020年度は、既存の公正知覚研究を展望した。我々は、主に3つの視点から公正知覚に関する先行研究を展望した。第1に、公正要因を整理した。結果の公正、手続きの公正、対人的公正さの各次元の要因を特定していった。公正要因を整理する際、「公正知覚の源」の視点も導入した。「公正知覚の源」とは、公正さが体験される対象が人かそうでないかという分類である。また、公正要因を特定するために、公正さを測定するための尺度を網羅的に収集することを試みた(Rupp, Shapiro, Folger, Skarlicki, & Shao, 2017)。第2に、公正知覚のメカニズムを説明する理論を整理した。公正ヒューリスティック理論、不確実性管理理論、フェアネス理論などの観点から公正知覚メカニズムが、改めて整理された。第3に、公正と不公正の同異性について検証した。我々は、不公正は公正の単純な反対概念ではなく、公正とは非対称な概念と仮定する。プロスペクト理論の損失回避という概念が示すように、個人は利益よりも損失により敏感に反応するとされている。これに従えば、個人は公正さよりも不公正さにより敏感に反応すると予想される。この予想を支持する理論として、義務論モデル、イメージ理論、資源保持理論などが取り上げられた。 以上の展望を軸に、現在は、公正判断を実証的に探るための実験の準備が進められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、大局的公正という新しい概念を構築するために必要となる先行研究の整理を行った。公正知覚の研究は、社会心理学や産業・組織心理学の領域において既に多くの経験的な実証研究が積み重ねられている。心理学の公正研究は、倫理学が理論的に定義する客観的な公正さではなく、主観的な公正さに焦点を向けるものであった。 公正研究は、公正が知覚されるメカニズムだけでなく、公正さが個人に与える効果についても多くの研究が行われてきた。本研究は、公正さを従属変数として捉える研究に絞って展望を行った。 この試みによって2021年度から予定している実験を実施するための素材が集まったと判断している。また、論文化する際に参照すべき理論について整理できたと考えている。 しかしながら、コロナ禍で実験を実施することが難しく、20年度に予定されていた「公正および不公正評価に関する実験的検討Ⅰ」が遂行できなかった。この点を考慮して、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、「公正および不公正評価に関する実験的検討Ⅰ」と「公正および不公正評価に関する実験的検討Ⅱ:文化的思考様式の調整効果」を実施することを予定している。 「公正および不公正評価に関する実験的検討Ⅰ」は、2020年度に慶應義塾大学大学院経営管理研究科や京都大学大学院経営管理研究科のMBA生を対象として実施される予定であった。しかし、コロナ禍の影響で実験が不可能であった。そこで代替案としてオンライン実験や研究分担者である佐々木宏之先生が所属する新潟国際情報大学における実験の実施も考えている。新潟は、横浜や京都に比べてコロナによる活動制限が比較的少ないとされており、実験などを行いやすい環境であると思われる。よって、実現可能性は高いと考えている。 2021年度の春学期(4月~7月)は、実験のための刺激やシナリオを作成したいと考えている。新潟国際情報大学にも出張をして、実験設備や刺激の確認を行いたいと考えている。 2021年度の秋学期以降(9月~3月)は、実験を実施することに集中したい。上述のようにオンラインや新潟国際情報大学における実施を前提に進めていくが、コロナの終息を勘案しながら慶應義塾大学大学院や京都大学大学院に通うMBA留学生を参加者とする実験も視野にいれて研究を推進してく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍における移動制限などによって出張伴う活動が大きく制限されたので予定通りの予算消化が達成できなかった。 2021年度の予算は、オンライン調査などを実施する費用などに充当させたいと考えている。また、新潟国際情報大学は、対面による授業を引き続き行っている。よって、当大学における実験室実験を実行するための費用に活用したいと考えている。
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