2021 Fiscal Year Research-status Report
起きにくいことの価値は高いか:確率と効用の相関に対する心理学的検討
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20K03300
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
中村 國則 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (40572889)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 意思決定 / 確率 / 効用 |
Outline of Annual Research Achievements |
確率と価値との関連を検討することが本研究の目的であり,その中で確率と効用の関係に関する理論的進展の歴史的経緯に着目し,改めて現時点での理論的展開とその問題点について整理した.その中で,日本における意思決定研究のパイオニアである戸田正直の期待効用や確率論に関連した過去の研究に着目し,その独創的な点を論じるとともに現在の意思決定研究の研究課題について議論した論文を公刊した(中村, 2021,認知科学).その中では,現在の心理学・認知科学の中で想定されているような,複雑な確率計算を実行する能力を備えた人間像という仮定が,既に1950年代の戸田正直の研究の中でみられることを指摘している.また,その検討の中で心理学・認知科学における合理性概念に着目し,過去に提案された様々な合理性概念のレビューを通じてそれらの理論的位置づけを整理すると同時に,共通した理論的特徴・今後の課題について議論した.この研究成果は論文化して投稿され,掲載が決定している(中村・斎藤, 掲載予定,認知科学).この論文では,様々な合理性概念を位置づける地図を描くとともに,それらの合理性概念が共通して複数の基準を同時に解決することが人間の意思決定の課題と位置付けていること,合理性概念の人間行動における説明の位置づけ自体が時代とともに変化していることを指摘している. 以上の理論的な整理をふまえ,2022年度は改めて不確実性と効用という量が人間の心内でどのように表現されているか,人間がその量をどのように構成しているかを検討する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進める上で過去の効用理論や確率論に関する理論的整理を行うことが求められ,その分析に時間が割かれた一方で,改めて効用や確率といった概念が人間の行動を記述する上でどのような意味を持っているかを吟味・再解釈することができた.この理論的分析は今後の実証的研究を進める上で大いに役に立つものであり,その点で全般的には順調に進展していると評価することができる.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に効用と確率の理論的分析や人間の合理性概念の意義について検討した成果を踏まえ,2022年度は効用と確率の関係を現実場面のリスク場面や判断者自身の経験との関係で検討する予定である.具体的には,ギャンブル場面における当選確率や新型コロナウィルスに対する感染確率が参加者自身の経験とどのように関連するか,そしてその不確実性の判断の度合が参加者の考える結果の価値の大きさやリスクの大きさとどのように関連するかを検討する.
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの感染状況もあり,参加者の募集が思わしくなく,かつ国際学会での発表機会も限られたために旅費の支出が制限され,次年度使用額が生じる結果となった.2022年度は出来る限り海外学会での研究成果の公表を目指し,かつデータ収集も精力的に行いたい.
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Research Products
(1 results)