2020 Fiscal Year Research-status Report
「集団による共有」が災害のリスク認知パラドクスにもたらす行動変容の研究
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20K03304
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Research Institution | Baika Women's University |
Principal Investigator |
塩谷 尚正 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00756231)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | COVID-19 / 感染症 / リスク認知 / 波及的影響 / 責任感 / 集団内関係性認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は新型コロナウィルスの感染拡大により、研究に注力できるエフォートの割合が計画よりも大幅に低下してしまった。そうした中で、新型コロナウィルスの感染拡大は一種の災害として社会に影響をおよぼす実態が顕現化されてきたことから、新型コロナウィルスの感染予防行動に関する質問紙調査を計画し、実施した。新型コロナウィルスの感染拡大を抑えるためには、個人ごとの予防行動の実施が重要になる。そこで、予防行動を促進するための要因を調査によって明らかにすることは、有効なリスクコミュニケーションを実践するための重要な知見となりうる。以上から、新型コロナウィルスの感染予防行動の実態と、集団意識(集団内関係性認知)やリスク認知、行動の責任感といった個人内因子を測定し、それらの関連を明らかにすることを調査の目的とした。 ウェブ調査会社に委託して、全国を緊急事態宣言の発出時期によって2つの地域に分類して、1238名からデータを収集した。その分析の結果、以下のことが示された。新型コロナウィルスに関する知識の多さ、個人の感染による遠位までの波及的影響に対する責任感の高さ、集団内関係性認知の高さが感染予防行動に正の影響を及ぼすことが示された。また、それらの要因の交互作用も認められた。リスク認知の効果は大きくはなかった。これらの結果は、緊急事態宣言の先行地域とそのほかの地域とでおおむね一致した。こうした研究成果を日本社会心理学会第61回大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度は、新型コロナウィルスの感染拡大により、その対応のための学務の負担が想定外かつ増加した。そのために、研究計画に費やすことのできるエフォートが大幅に低下し、進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響により、学務の負担増加や、研究のための環境の確保の困難さは続くが、オンラインを活用した研究環境の整備を進めてきた。先行研究の文献収集や研究協力者との議論を着実に実施していき、研究課題のリスク対処行動としての情報収集方略を測定するための尺度開発を進める。その尺度開発においては、ウェブ調査を実施してデータ収集と分析をする。また、昨年度に実施した新型コロナウィルスの感染予防行動に関する調査結果を論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、研究に注力できるエフォートが低下したことで進捗が遅れ、次年度使用額が生じた。
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