2021 Fiscal Year Research-status Report
Effects of exertion of power on the powerholders' cognition and persuasibility
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20K03314
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 芳昭 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20192502)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的影響力 / 勢力 / コントロール感 / BIS/BAS / 変革性 / リーダーシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、影響力を行使することが、特定の認知パターン(例えば、ポジティブ感情、行動活性システム(BAS)、抽象的解釈)を活性化させる現象に注目している。しかし、2020年度の実験結果はその現象を支持しなかった。Den Hartog(2004)の国際比較研究によれば、他者に主張することが日本では相対的に低いことが指摘され、欧米圏で見出された影響力-認知の関連性は、日本においては認められない傾向があるのかもしれない。2021年度は、さらにデータを収集してこの関連性について検討することにした。 2020年度の研究Ⅰとは異なるWeb調査会社(Macromill社)の登録回答者(n=894)を対象にオンライン質問紙実験(研究Ⅲ)を行った。独立変数は、影響体験想起条件、被影響体験想起条件、リーダーシップ行動計画条件、コントロール条件であった。独立変数の操作として自由記述を回答者に依頼したが、70文字以上記述した回答者は305人(34.1%)であった。その内、実験操作に適合する記述をした者は96人(全体の10.7%)であった。G*Powerで必要なサンプルサイズを推定したところ236人であったので、さらに、Freeasy社の登録回答者(n=1,440)を対象にデータを収集した。依頼内容に適合する記述をした回答者は193人(13.4%)であった。従属変数は、コントロール感、BIS/BAS、変革性に絞った。影響力-認知関連性の理論に基づけば、影響力体験想起条件の方が被影響体験想起条件よりもコントロール感、BAS、変革性得点が高く、BIS得点の低いことが予測されたが、有意差は認められなかった(n=289)。しかしながら、リーダーシップ行動計画群はコントロール群よりもコントロール感得点が高く、また、リーダーシップ行動計画群は残り3群よりも変革性が有意に低いことが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、影響力(power、勢力)を保持することによる認知パターンへの影響を日本において確認すること、その認知パターンの一つである変革性(unconventionality)への影響を新たに明らかにすること、そして、そのような認知パターンが確認された場合、それを活かした影響力保持者に対する説得方法を明らかにすることである。 2020年度は、まず、安藤・大島(2020)の第2章「影響力保持者の認知パターン」において諸研究を総覧し、理論や知見をまとめた。それと並行して2つのオンライン実験を実施した。その結果、研究Ⅰにおいては、影響力感についてリーダーシップ行動体験条件>被影響体験想起条件・コントロール条件、コントロール感については、リーダーシップ行動体験条件>コントロール条件という有意差が認められた。しかし、他の従属変数を含め、影響体験想起条件と被影響体験想起条件との間に有意差は認められず、欧米圏で指摘されているような認知パターンは認められなかった。研究Ⅱにおいては、リーダー体験に関する研究Ⅰの再現性を確認しようとしたが、いずれの主効果、交互作用効果も見出されず、リーダーとしてグループ運営を考えることによる認定パターンへの影響は認められなかった。 2021年度も影響力-認知の関連性を明らかにするために、上述のオンライン実験(研究Ⅲ)を実施したが、予測されるような影響力保持者の認知パターンは見出されなかった。しかしながら、6人グループのリーダーとしてグループ運営について考えるという展望的思考については、コントロール条件よりもコントロール感を認知していた。これは、回想的想起よりも展望的思考の方が他者に影響を与えることによる認知パターンへの影響を示唆していると考えられる。今後は、この展望的対人的影響と階層的対人的影響による認知パターンの差異に注目していくことにする。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、本研究の最終年度であり、引き続き日本における影響力-認知の関連性について明確な結果が得られるよう計画していくことにする。研究Ⅲにおいては、今までに影響を与えた/受けた体験を想起する回想的想起とリーダーとして(将来的に)他者に影響を与えることを考える展望的思考との間に差がありそうなことが見出されたので、その点を明らかにしていくことにする。特に、リーダーシップ行動体験条件の操作について、研究Ⅲにおいては、「3ヵ月後の成果発表に向けて5人グループをリーダーとしてまとめていくことになり、その際のメンバーへの影響の与え方、リーダーとして行うべきことや注意すべきことを100文字以上記述する」よう教示していた。研究Ⅳでは、さらに「(a)作業の手順を誤解しているメンバーや期待以上の成果を出しているメンバーに対する声がけを自由記述する。(b)3ヵ月後の成果発表後、報奨金を5人のメンバーに分配できることになった場合、リーダーから見て各メンバーの貢献度に応じてどのようにその報奨金を分配するか」という点も付加し、リーダーとしてグループ・メンバーに影響を与えることをさらに顕現化させて思考させ、そのことによる認知パターンへの影響を探ることにする。 上述のように、日本においては、影響力-認知の関連性は見出されないようなので、本研究の当初の目的の一つであった影響力保持者の認知パターンに則した影響力保持者への説得方法については検討する基盤が失われたと言える。そのため、今後は、影響力行使体験の回想的想起と展望的思考との比較に注目し、日本においては、後者による認知パターン変化の可能性があることを明らかにしていくことにする。
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